アスベスト救済基金全国ホットライン実施8月21~22日-105件/全国
毎年8月に実施されるアスベスト救済基金全国ホットラインが今年も実施された。コロナ禍にもかかわらず、報道も積極的にホットラインについて取り扱ってくれたおかげで、西日本では2日間に79件、その後も相談電話は止まずに9月2日までに105件が寄せられている。
病名別で見てみると、今年も中皮腫の相談が11件と多く、そのうち5件は闘病中の方やご家族からの相談である。このような事案は迅速な対応が求められるため、ひょうご労働安全衛生センターを中心にフォローがされているところである。補償があることで安心して治療を受けることができるが、すでに労災や救済給付の手続きは行われて、決定待ちという事案が目立った。中皮腫をはじめとするアスベスト疾患については石綿救済法に基づく救済給付が受給できることは医療機関にも周知されていることから、医療ソーシャルワーカーなどが協力して手続きを進めていると考えられる。労災についても、すでに退職していることや勤めていた事業場が廃業していることなどを理由に手続きが進められていない傾向が例年みられるが、今年の相談においては労災請求を行い、認定されているケースが多かった。
肺がんについても同様で、15件の相談のうち石綿に起因する肺がんかどうかで議論になっているものは3件であり、比較的労災が認められている方からの支給金などに関する相談が多かったと言える。
じん肺・石綿肺が疑われる事案は9件を数え、じん肺健康診断結果証明書を送付して主治医等で診てもらうべく支援が進められている。相談者には石綿健康管理手帳は発行されているものの、中皮腫や肺がんのような顕著な石綿関連疾患がないために、経過観察で済まされていることもある。中には、健康管理手帳の指定医療機関が初診時に石綿肺所見があるというじん肺健康診断結果証明書を発行してくれていたという相談者もいて、このケースについては石綿肺の認定に向けて再度じん肺検診を受けてもらうことになった。
決定までの期間が長いという相談もいくつか見られるが、コロナ禍で監督署の体制が整わないのか、あるいは昨年相談があったケースのように不慣れな職員による不適切な調査のために長引いてしまっているのか原因は不明である。
今回は、2021年5月17日の最高裁判決を受けて支給金に関する問い合わせが多く、11件が労災補償の受給者からの支給金等についての相談であった。11件の中には造船業従事者や船員における健康被害被災者からの相談が含まれるが、これらは泉南アスベスト訴訟最高裁判決に基づく国家賠償にも、建設アスベスト訴訟に基づく支給金にも当てはまらない。個別に企業補償を求めるのか、あるいはより広範な石綿健康被害に対する国からの賠償制度の構築を目指していくのか考えさせられる機会でもあった。
関西労災職業病2021年9月525号
コメントを投稿するにはログインしてください。