造船所での倒壊事故、外国人技能実習生が被災/愛媛

尾道と今治を結ぶしまなみ海道の島々では昔から造船業が盛んである。今回訪れた事業所は大三島にある今治造船の下請で、倒壊による労災事故が発生した現場である。

事故の概要は、技能実習生が船体ブロックに部材を溶接する作業中、当該船体ブロックが倒れてきて下敷きになった際、右足を挟まれて負傷し、骨折だけではなく血管も損傷し、膝上から切断せざるをえなくなったというものである。愛媛県の造船業ではでは令和元年度の労災事故のうち、1割は「崩壊・倒壊」と呼ばれる事故であり、同年度の死亡災害事例でも「鉄板の部材を船体ブロックに取り付けるため、当該部材の両側をレバーブロックで船体ブロックに固定し溶接位置を決める作業中、被災者に部材が倒れた(40代・男性)」というものと「船体ブロックの部材を仮置きし、部材の溶接作業を行っていたところ、設置位置がずれていたため、調整を行っていたとき、被災者に当該部材が倒れた(40代・男性)」というものが報告されている。船舶は巨大な建造物であるから、「墜落・転落」、「飛来・落下」など高所作業に伴う危険が多いが、部材の倒壊も死につながるのである。

負傷の原因となった船体ブロック

今回の事故は、長さ17mと長い鉄板であったが、高さは1.1mと背丈より低かった。これに同じ長さの平板を立ったまま溶接していくのであるが、取り付ける側の鉄板自体には補強材が付いていて、これが足のように地面についているし、手で揺らしてみても動かなかったので倒れることはないと安心して溶接作業を始めたようである。しかし、本来であれば、船体ブロックの組立時には、ブロック倒壊防止のためにワイヤロープなどで捕縛・固定しなくてはならない。事業所の社長によると、溶接の熱で鉄板がたゆんだのではないかという。作業開始時には動かなかったとしても、溶接をしているうちに被災者側にたゆみはじめ、限界に達したところで倒壊した、と考えられるのである。そのようなことが社長に想像がつくのは長く作業をしてきたからこそであり、そういうことこそ技能実習生には伝えていってもらいたかったところである。

この事業所では、実習生以外にも外国人造船就労者受入事業に基づく外国人材も受け入れている。日本人従業員もいるものの、溶接作業は外国人労働者に任せていた。技能実習制度の使い方としては正しいやり方であり、職場の雰囲気も良かっただけにたいへん悔やまれる事故であった。

関西労災職業病2021年4月520号