労災の請求、押印不要に!権利行使の形式的阻害要因を排除

役所に提出する書類に必要だった押印が廃止されている。労災保険の様々な請求書をはじめ労働関係の書類についても、ほとんどの様式が改正され、「印」の文字が消えている。

政府は昨年7月17日の閣議決定で、「法令等又は慣行により、国民や事業者等に対して書面の作成・提出等、押印又は対面を求めている手続」について、年内に検討し必要な改正を行うとした。これをうけて厚生労働省は、「押印又は署名を求めている手続について、国民や事業者等の押印等を不要とするために必要な改正を行う」とし、同12月25日付けで通達を発し、ほとんどの申請書等について押印不要とする省令改正を行った。

その結果、労災保険関係の療養、休業、障害、遺族、葬祭等の各給付請求書などの様式を改定されることとなった。現在、厚生労働省のホームページでダウンロードできる様式は全てリニューアルされている。たとえば休業補償の請求書(様式第8号)の「請求人」欄はもちろんのこと、「事業主」欄、「診療担当者の証明」欄も「印」の文字が消えた。

今年1月7日の「労災保険の請求書等に係る押印等の見直しの留意点について」とする都道府県労働局労災補償課長宛ての本省通達は、次のように留意点を列挙している。

  1. 請求人等の記名等があれば、受付することとして差し支えないこと。したがって、押印等がないことのみをもって不備返戻を行わないこと。なお、事業主、請求人等が請求書等を作成するにあたり、引き続き押印等を行っている場合については、押印等が不要になった旨の教示を行うこと。
  2. 労災保険における請求書等については、全ての手続において押印等を求めないものであるが、記名等をすることについては、記載方法を問わず引き続き必要となるものであり、記名等がない請求書等については、電話照会によって補正することなく、不備返戻を行うこと。
  3. 押印欄のある改正前の様式も、当分の間、取り繕って使用することが可能であり、この様式による場合、押印欄の二重線等による訂正を求める必要は無いこと。

その他、加除訂正印についても不要とし、記名の信ぴょう性に疑義が生じたときは電話照会等により確認を行うこととしている。

また、昨年12月25日の改正前に受け付けた請求書で押印等がないものであっても、改正日以降は他の記載事項に不備がなければ不備返戻の必要はないとした。

労働者の権利行使について、形式的な阻害要因が取り除かれることは歓迎すべきことといえるだろう。

関西労災職業病2021年3月519号