2020年石綿健康被害ホットライン開催、二日間で大阪75件、全国200件超

2021アスベスト被害ホットライン@関西労働者安全センター事務所

2020年も石綿ばく露作業による労災認定事業場の公表が12月17日、18日に行われ、ちょうどこの時期と重なるように中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(患者と家族の会)による石綿健康被害に関する相談ホットラインが全国一斉に開設された。

普段から患者と家族の会はアスベスト健康被害に関して相談に対応しているが、この時期は全国紙で一斉に前年1年間で労災が認められた事業場について公表されるために、たいへん相談が多い。加えて今回は12月14日、2008年に始まった建設アスベスト訴訟に関し、最高裁判所で国の責任が確定した。さらにホームセンターを展開するカインズが、12月16日に過去3年にわたって販売してきた珪藻土バスマットについて、石綿が含有されているために回収する旨の発表を行った。

この状況で相談ホットラインを開設したため、今回も多くの相談が寄せられた。全国5か所に設けた相談ポイントのうち、関西労働者安全センターが対応するエリアは近畿および中国地方であったが、二日間で75件、全国では200件を超える相談が寄せられた。

相談には、上記のバスマットや自宅の建材に関する相談もあったが、中皮腫の闘病中の方からの相談もあり、治療に関する相談は中皮腫サポートキャラバン隊が対応した。中皮腫の診断を受けてから3年以上経っているにもかかわらず、労災請求を行っていない事案についてはすぐに訪問し、聴き取りを行う必要がある。いずれの方も「石綿にばく露した覚えはない」ということはなく、建設業で直接・間接的にばく露されてきた方ばかりである。先述の建設アスベスト訴訟にもかかわってくるため、聴き取りも詳細に行っていくことになるだろう。

石綿ばく露については自覚のない方も少なくないが、最近は職歴を尋ねる医師もあり、職業ばく露を確認されていることは珍しくない。しかし、どうしても石綿健康被害救済法上の救済給付に流れがちである。フォローの一環で医療機関と話をすると、疾病が確認できれば療養も被災者に対する給付も行われる救済給付と比較し、労災保険は手続き困難であるというイメージがある。確かに医療機関と本人か家族がいれば手続きが可能な救済給付と比較し、労災保険には業務起因性が問われることから、事業所等の第三者の協力が必要であることは事実である。加えて比較的高齢になってから発症することから、「高齢でもう働いていない」、「退職して石綿事業場で働いていない」、「石綿事業場そのものがもう存在していない」などの理由で労災請求ができないと思っている方もいる。

今回受けた相談者にも、3件も職業ばく露を確認しておきながら救済給付で処理しているケースがあった。中には泉南型国家賠償訴訟で和解が成立しているにも関わらず、未だに労災で処理していないケースもあり、石綿被害を正しく把握するためにも労災請求を督励していくべきだろう。

関西労災職業病2021年1月517号