社員をうつ病に罹患させて、さらにお金までとっちゃう方法~損害賠償とか罰金とか!?/大阪

精神疾患に関する相談のうち、病気になった途端に会社から不当な要求を受ける事案が2件続いた。

うつ状態の留学生に不当損賠要求

1件目は飲食店でアルバイトをしている留学生のケースである。バイト先に隣接する系列店の店長から小言を言われ続けているうちにうつ状態になっていた。それでも働き続けていたが、労働条件の引き下げを突きつけられてついに爆発し、店舗の壁を蹴って穴をあけてしまった。

やってしまったことはやってしまったことで責任を取るつもりだったが、店長から送られてきたLINEメッセージには「入居施設からも損害賠償を求められるので、明後日までに50万円を持ってこい」「時間がたつ毎に恐ろしいほど話が大きくなってくる。このままでは50万円では済まない。金融機関で借りてでも、親に泣きついてでも金を作ってこい」と書かれていた。

この相談を本人から受けたときは、店長が小遣い稼ぎのためにLINEを使って脅したのであろうと考えていた。このような要求を止めさせるために、上記メッセージのスクリーンショットを、店舗を運営する会社に送ったところ、会社からは「入居施設の企業イメージが失墜することにより、入居施設全体の営業利益が落ち、これらの損害賠償を請求される可能性がある」などと、会社の要求は適正なものであると主張する書面が届いた。50万円の要求は店長の独断ではなく、会社としての判断らしい。慌てた本人は留学生仲間に頼んでお金をかき集め、なんとか50万円で済ませてもらおうとしたが、すぐに止めさせた。

うつ病の保育士に罰金!?

2件目の被害者は保育園の先生だったが、社長が別途運営しているレストランの開店準備を手伝わされていた。店舗開店後はほとんどそのレストランで働き、慣れない仕事と社長からの度重なる叱責でうつ病に罹患した。現在は休業し療養を続けているが、出勤しないことについての罰金と代替要員確保のための費用などを請求されている。

また、この事業所は、精神疾患に罹患するような人を採用しないという方針を立てていて、送られてきた書面には「弊社では、これまでの経験等から精神疾患がある場合(既往歴含む)は、原則採用をしておりません」と明言されている。曰く、過去に精神疾患の既往歴のあるアルバイトを採用し、契約期間途中に退職されてしまったことで業務に大きな損失を被ったことがあるため精神疾患罹患経験者は採用しないということだが、病気に対する偏見と罹患者への差別と言わざるを得ない。

2件とも、会社が「真剣に」精神疾患に罹患した従業員に対して金銭を要求し、しかも第三者に対して書面で自分たちの正当性を堂々と伝えてくるところをみると、それなりの規模の会社でありながら雇用の基本的なルールすら理解していないことが明らかである。

しかし会社は、本人らを「言われた通りお金を払って終わらせた方がマシ」と思えるほど執拗に追い詰め、症状を悪化させようとしている。第三者が、「『訴える』と言われても応じるな。裁判所がこのような要求を認めるはずがない」と説いても何の気休めにもならない。

また、労働基準監督署への申告や労働組合への加入、あるいは弁護士に代理人になってもらうことを提案しても、頑なに拒む。とにかく法律や道理の問題ではなく、恐怖から逃れたいという一心なのである。現在は会社からの書面は開封させずにこちらで預かり、そのうえで何もしない、ということにしている。本人が安心するまで様子を見ようと考えている。

関西労災職業病2020年9月514号