遺族による行政保有個人情報開示請求問題~無意味な本人確認種類提出求める労働局/岡山
労災被災者が亡くなったことにより、遺族補償請求を行った遺族が、その結果について保有個人情報開示請求を行うことは、業務上認定の根拠を調べる上で一般的に行われており、また、民事損害賠償訴訟を提起するうえでも必要不可欠な手続きである。
この手続き説明は、「保有個人情報開示請求書」の裏面に記載されていて、①どこの、誰が開示をするのか、②求める保有個人情報は何か、③求める開示の実施方法は何か、明らかにしたうえで、手数料を納付し、本人確認書類を添付する、と明記されている。
本人確認書類については
- 窓口来所による開示請求の場合
窓口に来所して開示請求をする場合、本人確認のため、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律施行令第11条の規定により、請求者本人の氏名及び現住所が記載された運転免許証、健康保険の被保険者証、個人番号カード、在留カード、特別永住者証明書又は特別永住者証明書とみなされる外国人登録証明書等の書類を提示又は提出してください。 - 送付による開示請求の場合
保有個人情報開示請求書を送付して保有個人情報の開示請求をする場合には、(1)の本人確認書類を複写機により複写したものに併せて、住民票の写しを提出してください。
と記載されており、請求人が誰であるのか明らかにすることが求められている。
ところが、遺族が故人に関して行う請求、すなわち被災者である故人の療養補償給付・休業補償給付の支給決定に関する資料の開示を求める際、地方労働局の担当部署から「故人と請求人の関係が明らかになる資料、つまり戸籍謄本を提出してもらいたい」と要求されることがある。
保有個人情報開示請求である以上、故人と請求人が同一人物ではないという理由で不開示とするのであれば理解できるが、故人と請求人の関連を予め確認するという手続きは不要であると思う。また、労災の遺族補償請求を行っている以上、遺族補償給付の請求者と被災者との関連はすでに明らかにされている。遺族補償請求時に、戸籍謄本もすでに提出済みであるためである。
近畿では大阪労働局や滋賀労働局で戸籍謄本が求められないことを例示して、奈良労働局の方針をすでに改めてもらったが、岡山労働局で同じ事案が発生した。「うちではいつもそうしている」と担当者は言うが、法的な根拠もなく「いつもそうしているから」という理由で屋上に屋を架す手続きを保有個人情報開示請求の際に求めるのは、徒に請求者の負担と労力を増やすだけではないだろうか。
関西労災職業病2019年10月504号