通勤災害の認定について(10)自宅の範囲
自宅敷地の内と外
今回は自宅の範囲について学習する。
解説書などで紹介されているケースは、「マイカー通勤をしている被災労働者は、当日出勤のため、 自宅敷地内にある車庫から車を車庫外に出そう と操作したが、 車庫内の地盤が凍結しているためスリップして車が出ないので、 妻を呼びふたりで車を押し出し中、たまたま車庫に立てかけてあった木ぞりに足が触れたため、 それが倒れてきて左足を負傷したものである。」 という、雪国ならではの事故である。
本件については通勤災害とは認められなかったが、その理由については、 自宅敷地内にある車庫は住居内にあり、 被災労働者の住居内において発生した災害であるから、 とされている。住居内ではなく、通勤経路内で発生した災害でなければ通勤災害として認められないのである。
住居とは、 労働者が居住して日常生活の用に供するもので、 労働者の就業のための拠点となるところ、 ということはここ数回繰り返し学習してきたところであるが、 その範囲は屋内に限ったものではい。 住居と通勤経路の境界は、「通常、一般の人が自由に通行することができるかどうかにより区分することとされて」 いることから、 敷地内は住居の一部ということなる。一般的に、 門や外戸がその境界にあたるとされている。
そのため、 出勤の際に家の玄関を出て外戸までに石段があるような家は気をつけなくてはいけない。
冒頭で紹介したケースのように、 凍結のために玄関を出てから外戸までの階段において転倒して負傷しても、「家(敷地内)における負傷」として通勤災害として認められないからである。
アパートの内と外
一方、アパート住まいの被災者は、玄関を出ればそこはすでに通勤経路となる。 実際に発生した事件として、「被災労働者は、出社するため、 アパートの二階の自室(住居)を出て階段を下りるとき、下から二段目のところで、靴のかかとが階段に引っかかったため前のめりに転倒し、負傷」したケースや、「アパートの自室から出勤しようと通路へ出て鍵をかけるため玄関のドアの把手をつかもうとしたところ、風が吹いてきて、 ドアが勢いよく閉まり、差し出していた右手をはさまれ負傷」したケースでは、 アパートの階段や通路が通勤経路と認めるため通勤災害として認定されている。自室の玄関を出た通路は一般人が通行することができる、という点が戸建て住まいと異なり、 アパートの場合は玄関ドアが住居と通勤経路との境界ととらえられている。
となると、 同じドアに手を挟まれるような事故あっても、 戸外に門があるような戸建てで発生したときと、アパートのドアで手を挟んだときとでは解釈が変わるということになる。
関西労災職業病2017年8月480号