元はつり労働者のじん肺労災認定(管理2・肺結核・続発性気管支拡張症)、大阪と沖縄で建築・解体に従事

本誌2003年2月号で報告したじん肺・肺結核・続発性気管支拡張症で沖縄県豊見城市の病院に入院中の男性Aさん(72才、那覇市在住)に対して、9月に沖縄労基署は業務上疾病と認める決定を行った。
Aさんは、20代後半から、建設・解体の現場ではつり作業に就いた。一時、大阪で働いたが、主に沖縄ではつり作業に従事した。Aさんによれば、最終粉じん作業は、恩納村(おんなそん)にあるホテル「ラマダ・ルネッサンス・リゾート・オキナワ」建設工事で1987年前後とみられたため、所轄の沖縄労基署に昨年労災請求、約10ヶ月を経て支給決定となった。

じん肺肺がんで労災請求中の1件をはじめ、今後も沖縄のはつり労働者の問題に取り組んでいくことにしており、近日中に、沖縄での調査、相談活動を行う予定になっている。

ところで、Aさんの場合、結核と診断され、治療を受けた医療機関が、いずれも県立病院、国立病院であったにもかかわらず、労災補償の道をつけてもらえていなかった。ここにじん肺患者のおかれた難しい状況が象徴されている。労災請求への協力を求めて面談した国立病院の主治医に「この写真のどこにじん肺があるのかわからない」と言われたときは少しショックだった。「都会はじん肺砂漠だ」という人もいるくらいで、医療機関の無理解がじん肺患者の救済を阻む要因になっている。それは全国共通の問題であって、今回の経験が特に沖縄的なわけではないにしても、じん肺患者を取り巻く不十分な状況があることが数字からもうかがえる。

沖縄県における過去10年の「じん肺及びその合併症での新規労災認定件数」は次のようになっている。
2001年度-0件(建設業-0件)、00年度-1件、99年度-2件、98年度-1件、97年度-5件、96年度-1件、95年度-2件、94年度-1件、93年度-0件、92年度-2件。
県の人口が133万人であるとしても、全国的に見るとかなり少ない。

2002年の沖縄県のじん肺管理区分決定状況をみると、全体で3件(すべてセメント製造業で管理2)。はつり作業者が該当する「ずい道工事以外の建設業」では0件。
管理区分申請はじん肺健診で有所見とされた者について行われる。そこで、2002年のじん肺健診実施状況を調べてみると、はつり業者が該当する「建築工事」では5業者がじん肺健診を実施していたが、沖縄労働局によると、「その中にはつり業者は含まれていない」とのことだ。

つまり、はつり業者がほとんどじん肺健診を実施していない可能性が高く、建設業の中で、粉じんに高度に曝露しているはつり労働者の健康管理が全く行われていないのではないかと考えられる。健康障害が当たり前であるほど、露見することを嫌って健康管理を怠りがちになるというのが一般的だろう。上記の新規労災認定件数が少ないことは、こうしたことにも起因しているかもしれない。
いずれにせよ、沖縄のはつり労働者の健康管理については抜本的な対策が必要で、このことは、他の地方も同様と思われる。

関西労災職業病2003年9月号