まさかの急性期のみ労災扱い ・重量物取扱い外国人労働者の腰痛/滋賀

20年間水道管製造工場で重労働

外国人労働者の働く職場は重労働が多いが、ペルー女性のAさんも、20年にわたって水道管の製造工場で重労働に従事してきた。しかしながら、重い製品の取扱で腰痛となり、休業することになってしまった。
腰痛の原因は、コンベアからはみ出して片側が床に落ちてしまった水道管を、抱えてコンベアに戻したことだった。
水道管は内径150mm、長さ2m、重さは77kgだった。当初は健康保険を使い、傷病手当金をもらって休業していたが、休業が長引くにつれ、完治するかどうかもわからないし補償についても不安になったAさんは、労災保険を請求したいと思い、関西労働者安全センターに相談してきた。

通院中の事故

重量物の取り扱いでの事故であるので、災害性腰痛として認定されるかと思ったが、実はAさんが腰痛になったのは初めてではなく、その10か月前にも腰痛を起こし、3か月ほど休業していた。その際に「腰椎椎間板ヘルニア」と診断され、職場復帰後も通院して物理療法を続けていた。そこに今回の事故が起こって、再度休業することになった。
最初の腰痛は、角形の水道管、内径450mm、長さ2.4m、重さ1,200kgのものをローラーコンベア上を押して移動させているときに起こった。当然、こちらも労災であるので、二度の事故について詳しい申立書を作成し、まずは、今回の事故から約1か月分の休業補償を労災へ請求した。

はじめの腰痛を調査せず私病扱い

ところが蓋を開けてみると、労働基準監督署は、労災認定すると同時に休業補償は請求した1か月分しか認めないと知らせてきた。監督署によると、今回の休業は2度目の事故によるものなので、2度目の事故について調査し、労災と認めたが、1度目の事故については請求されていないので調査していない。病名が「椎間板ヘルニア」であるので私病とし、労災による急性症状のみ労災扱いとする、ということだ。信じられないことに、同時に病状についても調査し、急性期は終わったと判断したという。
Aさんは、事故後半年たつのにまだ休業中である。

主治医が労災請求を妨害

労働基準監督署のこの判断に影響を与えたのは、主治医の意見と考えられる。主治医は傷病手当金を請求しているから労災請求をするのはおかしいと言って、労災の請求書を書くのを渋った。
労災がおりれば返戻するので2重取りにならないし、まずは請求を起こさなくては手続きが進まない旨説明したのだが、主治医は「(請求するのは)旦那に甲斐性がないからか」「自動車工場で働く腰痛の患者がいるが、彼は労災なんてせずに頑張っているのに」とか失礼な発言を重ねた。
最終的には請求書にしぶしぶ記載したが、医師が労災請求を妨害するとは異常な事態だった。
Aさんの労災は一応認められたものの、治療はまだ続いており、その分は労災扱いされない。
労災認定を受けて工場とも今後の雇用について話をしなければならないが、Aさんは腰痛の後遺症が残る可能性も高く、適切な補償が得られるようすすめたい。

重い水道管持ち上げ腰痛に

関西労災職業病2015年9月号