通勤災害の認定について(9)自宅でない「住居」からの通勤

長女宅や病院からの通勤

ここ2回ほど住居について学習をしてきたが、住居とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、労働者本人の就業のための拠点となっているところをいう。

今回は、 日常生活の用に供しているとは呼べない場所からの通勤途上の災害が認められないかどうか考えてみよう。

  1. 長女の出産に際し、その家族の世話をするために泊まり込んだ長女宅から通勤する途中の災害
    通常は自宅より通勤していた被災労働者が、長女の第三子の出産に際し、長女一家の家事、 産褥等を世話するため、15日間長女宅に泊まりこみ、そこから通勤していたところ、 通勤途中で足を滑らせて転倒し受傷したことについて、長女宅が住居として扱われ、通勤災害として認められた。
  2. 夫の看護のため、母親と交代で一日おきに寝泊まりしている病院から出勤する途中の災害
    頚椎手術により長期入院中の夫の看護のため、 被災労働者は、 夫の入院する病院に一日おきに寝泊まりしていたが、病院が住居として扱われ、病院から就業先に出勤する際の負傷が通勤災害として認められた。

1件目で住居として扱われた場所は長女宅であり、 親族とはいえ別世帯である。いわば他人の家と大差ない。ここが住居として認められた根拠は、長女宅に継続して寝泊まりしていたという事実であった。

また2件目では病院が住居として認められたが、入院中の夫の看病のため、妻が病院に寝泊まりすることは、社会通念上、通常行われていることであることと、長期間継続して寝泊まりしていたという事実が認定の根拠となった。
両件とも、一時的な宿泊ではなく継続性がポイントになっているところを見ると、一定の期間宿泊し続けたり、 2件目のように1日おきであっても継続性が認められたりするケースでは、 自宅ではない家屋が住居として認められるようである。

継続性

次に、 継続性が認められる期間はどの程度だろうか。
長女宅の事案では1月4日から1月19日の15日間に加え、 負傷後も1月25日まで長女宅を拠点としていた。負傷までは15日間、また負傷後も含めると合計22 日間の期間にわたって宿泊していたことで継続性が認められている。 病院のケースでは、夫の手術後18日間継続又は1日おきに病院に寝泊まりし、やはり負傷後も同じような態様で夫の看護を続けていることから継続性が認められた。いずれも2週間から3週間程度の期間であるが、 負傷後の通勤についても調査をされているところを見ると、宿泊開始から負傷までの期間が短くてもその後の継続次第で住居として認められると考えられるだろう。

さて、 このような働き方は、働きながら子供や孫の面倒を見たり、 自分や配偶者の親の介護を抱えていたりする方に多く見られるのではないだろうか。 これだけの期間自宅を空けるとなるとそれなりの準備も必要であるし、 ときどき自宅に帰ることもあるに違いない。働くお母さん、お父さんは、 早く家族の元に行きたいと気が急くことも多いだろうが、 くれぐれも事故には注意して移動していただきたい。

関西労災職業病2017年7月479号