廃用症候群による脊髄損傷の元大工の死亡、労災年金支給を決定

2年前に胸随損傷で敗血症を発症して亡くなったKWさんの労災遺族補償年金請求が再審査請求で認定された報告をしたが、以降、脊髄損傷した労働者の労災関連の問題について、当事者団体などと情報共有を行い、取り組んできた。2015年にも脊髄損傷で労災認定を受け、傷病補償年金で療養中死亡した方の労災遺族請求について関わり、無事労災認定されたので報告する。

下半身不随で療養中「廃用症候群」で死亡

被災者は元大工で、1977年に仕事中の転落事故で腰随を損傷し、下半身不随となり労災認定を受けた。35歳だった。その後、傷病補償年金に移行して療養を続けていた。
下半身が動かせないという障害の影響は、年をとるにつれて強くなり、2011年9月には脳梗塞を発症、2012年は褥瘡から敗血症も起こした。2015年1月から容態が悪くなり、3月19日、73歳で亡くなった。死亡診断書の病名は「廃用症候群」だった。

長年夫の介護をしてきた妻のAさんは、労災の遺族年金の請求を行った。被災者は権利意識のあるしっかりした方で、労災手続きに関して問題が生じたときも、自分で何度も役所と交渉して解決してきた。Aさんは死亡に関しても労災認定を受けることが、今まで夫が勝ち取ってきたその遺志を尊重することだと思った。そして脊髄損傷者連合会の支部に相談したことから当センターにつながった。

様々な傷病を含む廃用症候群

「廃用症候群」とは、安静にしたり活動性が低下したことによって、身体に生じた状態のことで、例えば筋力が衰えて立てなくなったり、起立性低血圧や静脈血栓症、尿路感染症を起こしたりする状態のことだ。

労災で脊髄損傷と因果関係が認められるとして25の併発疾病があげられているが、そのなかに「廃用症候群」は入っていない。ただし、廃用症候群は、さまざまな症状の総称なので、廃用症候群の症状とされている症状の中に、上記25疾病がいくつも含まれている。例えば、関節拘縮、誤嚥性肺炎、褥瘡、尿路感染症、尿路結石症など。

労災保険の調査において労働基準監督署からの照会に対して、主治医は「脊損による寝たきりが続く中で、脳梗塞や褥瘡等ストレス(脊損による)や可動域減少による合併症が年月の経過の中で発生したものと考えられる」と廃用症候群の発症機序について説明し、「脊損がもととなって、それに加えるに合併症等を併発し廃用症候群となった」と因果関係について述べた。

それを受けて、労働基準監督署の担当者は、地方労災医員である医師に意見を求めた。
労災医員は、これまで提出された労働基準監督署への報告用の診断書などを参考に、これまで尿路感染、骨萎縮による骨折、知覚麻痺による皮膚潰瘍、褥瘡など様々な合併症を発症し、さらに脳梗塞を発症して右上下肢麻痺や失語症も生じ、日常的に全介護を要し、種々の発症する危険度がさらに高まっていたとし、この経過から見て主治医の意見は妥当であり、廃用症候群は脊髄損傷に関連して発症したものと判断した。

これを受けて、労働基準監督署は相当因果関係があると判断して労災認定した。
労働基準監督署は主治医の意見が出た時点で、因果関係が明らかであると考えたのか、被災者のカルテを医療機関から取り寄せることもしなかった。こちらとしては、納得のいく結果であったが、結論が出るまでは非常に心配な案件であった。

というのも、「廃用症候群」は労災認定基準で因果関係を認める合併症を含む病名とは言え、具体的に何という病名の合併症を生じたのが原因で死亡したのかというのが、主治医の意見には説明されておらず、取り寄せたカルテを精査してみても死亡の直接原因となったような合併症を発症していたか読み取れなかったからだ。

今回の判断は、結果的に、これまで脊損に伴って発症した様々な合併症が考慮され、それらのため亡くなってもおかしくない状態であったという総合的な考え方が取られたと言うことだと思う。
それは脊髄損傷の患者について正しい診方である。
このように、いつも総合的に判断してくれれば、長年、脊髄損傷とその合併症に苦しんでこられた方が、死亡時につけられた病名のために労災認定されないという悲劇は避けられると思う。
今回のケースのように主治医が、これまで併発した合併症をあげたうえで、「廃用症候群」という病名で死亡診断書を書くというのは、今後の参考になると考えられる。

関西労災職業病2016年1月462号