高齢者マンションの介護で労災/おざなりな事業者の対応<大阪>

大阪市北区にある 24時間サービス付き高齢者マンションの介護の仕事をしていたAさんは、 昨年7月の勤務中、 入居者の着替え介助の最中にちょっとした拍子に蹴り飛ばされ、 身体をかばおうと咄嗟についた手首を骨折、療養を余儀なくされた。 事務所に報告して翌日受診し、 休業療養することとなった。
ところが事業所は入居者による故意の動作だったかどうか等、 事情を聞きとるなどの対応をとったものの、労災としての手続きをとらずに放置したままだった。 Aさんの求めにも応じることがなかったので、 自ら用紙をとりよせ、事業場に記入をもとめ、休業補償給付については、自分で手続きを行おうとした。ところが事業所の記入や証明が不適当なままで手続きの完了をみることさえできず、連合の労働相談窓口に助けを求めたのだった。
結局、不充分な事業主証明のまま、 事実関係を明らかにしたうえで所轄の労働基準監督署に請求手続きを行い、休業補償は給付されることになった。
ところがAさんは、 労災扱いされていない状態であった療養開始後1週間の時点で、 手首の症状から介護の仕事は不可能と判断して自ら退職を申し出てしまったという。事業所側は、労災の手続きは一向に進めないのに、 退職届は速やかに受け取り、 そそくさと手続きを進めてしまった。 労災休業中は従業員の身分は保証されているのだから、退職の判断は後にすべきとアドバイスを受けたAさんは、あらためて労働組合に加入し、交渉を行うことにした。
結局、 療養の目途がついた受傷2か月後の退職とし、 在職時労災休業中の上積補償の支払いを受ける ことで解決することとなった。
介護労働は不安定な雇用条件での就業が一般的で、腰痛をはじめとする労働災害が多発していて、なおかつ対象となる要介護者との関係など問題が起きる場合が多い。 またAさんのように零細の介護事業者のもとで、十分な安全衛生対策もないなかでの業務が普通になっている。 政策的な対応が必要な所以だ。
『関西労災職業病』2018年2月(485号)