変わっていく労働法とそれを活用する人々~第36回全国安全センター総会参加レポート

2025年9月20日、21日の二日にかけて、全国労働安全衛生センター連絡会議の第36回総会が行われた。
会場は東京の全水道会館。東京ドームを臨みながらの開催であり、一部の参加者の気分を上げたり下げたりしたことだろう。
総会の内容を簡単にまとめる。

1.総会概要

一日目は二人のゲストの講演だった。
一人目が全労働省労働組合顧問の森崎巌氏で、「労基法『改革』の動向と課題-働く者の安全・健康を守るために何が必要か」というタイトル、二人目は日本芸能従事者協会代表理事で俳優の森崎めぐみ氏で、「芸能界で働く人の労働安全衛生と社会保障」というタイトルの講演をしていただいた。
二日目は、各安全センターのメンバーからの5つの報告と、総会議案の決議が行われた。
報告のタイトルを並べると、①「『労災保険制度の在り方に関する研究会』中間報告書に基づいた制度見直し」②「災害とアズベスト(阪神淡路30年プロジェクト/能登半島地震対応等)」③「じん肺診査ハンドブックの改訂等」④「新型コロナワクチン接種による健康被害」⑤「地域安全センター活動(おかやま労働安全衛生)」である。今回の原稿では、この5つの報告についてはふれないので、詳しく知りたい方は、関西労働者安全センターの種盛までお便りください。
総会議案の決議は、滞りなく参加者から承認された。
以下の文章では、一日目の二人の講演について内容を紹介する。

2.労働関連法改正、キーワードはデロゲーション方式

森崎厳氏

まず、森崎巌氏の講演についてである。氏は、2013年の「集団的労使関係法制に関する研究会」報告書2022年の「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書2024年の「労働基準関係法制研究会」報告書などを元に、近年進められている労働関連法案改正に対する問題点と、留意して進めないといけないポイントについて話してくださった。
2013年の研究会報告書では、「多様化する労働者の声を反映しえない、現状の『集団的労使コミュニケーション』」を問題意識として、以下の2つの手順で改革を進めるという結論だった。①現行の過半数代表制の枠組みのもと、過半数労働組合や過半数代表者の機能強化、②新たな従業員代表制を整備し、その構想を視野に入れながら、決定基準の介助等を担わせる、というものである。当面は①を進めつつ②の必要性を検証するということで、2013年の研究会はこれ以上具体的に何か決まったわけではない。ただ、②の方向性によっては、企業の御用組合が力を持つ可能性があるので、それを注視して動向を見守っていくというものだった。
そして2022年の研究会報告書。これも、具体的にどういうふうに法改正するという話までは行っていないが、さらに危うい方向の話が出てきている。
この研究会では、以下の4つを今後の基本方向に定めている。①どのような労働時間制度であっても労働者の健康確保が土台、②多様なニーズに応じた働き方を支える労働時間制度、③可能な限り、シンプルでわかりやすい労働時間制度、④労使当事者が現場のニーズを踏まえて選択でき、処遇は労使自治、である。そして、今後の方針として、①基本方向に即して裁量労働制の在り方の見直し、②適切な労使協議を行うため、過半数代表制や労使委員会の在り方を検討という2点を掲げた。
森崎巌氏は、この研究会の中で話し合われた内容の問題点を6項目にまとめて話してくださった。その中で、特に気になった2点を紹介したい。

一つ目は、労使合意の「デロゲーション(規制解除)方式」を拡大していく方針であることだ。デロゲーション方式とは、簡単に言うと、「健康を確保するに十分な制度であることが大前提」としつつ、労使の合意、本人の選択があれば、法定基準を超える働き方をすることを可能にする、というものだ。これは、一部の職種にはすでに認められているが(裁量労働制、高度プロフェッショナル制度)、それを現代に合わせて拡大していくべきだというのがこの方針である。
まず問題なのは、「健康を確保するに十分な制度」というのが何なのかということである。2025年9月現在、まだ具体的に決まっていないのだが、もしそれが、労働時間を規定するようなものではなく、労働安全衛生法のように、産業医の診断を重視するものになるようであれば、産業医と会社の関係によっては、ほぼ無制限に等しい状態になる。
また、労使の合意、本人の選択が、本当に対等な条件で行われるのかというのも問題である。労使が対等でなかったからこそ、今まで労働紛争が行われてきたのではないか。本人の選択は、本当に働きたいと思って選択しているのか。働きたくて選択する人と、会社から指示された業務が終わらないからしぶしぶ選択する人を分けられるのか。
ただ、私がメーカーの技術職として働いた経験からすると、時間外労働でも目を輝かせて生き生き働いている人は実際いたので、本当に健康を確保するに十分な制度で、労使対等に、且つ本人が自由に選択できるというものができたのなら、それは良い制度なのだろうとは思う。しかし、前述の通り、一歩間違えば、会社の命令で無制限に労働者が働かされる可能性のある非常に危険な変化なので、理想的な制度になるように、しっかり注視して、誤った方向に行きそうな時はどんどん意見を出していかねばならない。

二つ目は、方針③の、「シンプルでわかりやすい労働時間制度」である。労働時間制度は確かに複雑なのだが、これは何もいたずらに複雑にしたのではなく、当然、何か問題があって、必要だったから複雑になったはずである。時代の基準にそぐわない規定を見直したり無くしたりするのは、別に労働基準法だけに限らず、どんなルールでも必要なことだろうが、今回の方針のように、シンプルだけを求めて規定を無くすと、必要な規制が削られる可能性がある。
この点に関しては、森崎巌氏は、単純化よりも、一旦は明確化の方が必要なのではないかと仰っていた。要件、定義があいまいで、規制の実行力を無くしているものをまず見直すべきということだ。労基法第39条⑤の「有給休暇の時季変更権」や、「労働時間等に関する規定の適用除外」について、第42条2項の「管理監督者」に関する曖昧な記述などを例として挙げていた。
これらの問題点からわかるように、2022年の研究会では、労働時間が使用者の思うままになる危険性をはらんだ方針で話が進んでいた。
ここで、2024年の研究会の直前、2024年1月17日に、経団連から労働基準局長へ、提言書が渡されている。その内容は、デロゲーション方式の推進と、過半数労組のない企業は、民主的な手続きで複数人の代表を選出して、労使交渉ができるようにする制度の導入だ。2013年と2022年の研究会の方針を煮詰めたような提言である。ちょっとひねた見方かもしれないが、経団連は、この提言によって、労働者のためではなく、会社都合で労働時間規制の撤廃をできる制度を作ろうとしているように見える。研究会の方針は、このように利用されうる表現なのである。危ない!
この提言の影響もあったかもしれないが、2024年の研究会では、さらにデロゲーション方式や労使コミュニケーションについて話が進んでいる。報告書は、労働基準関係法制の総論的課題と労働時間法制の具体的課題の二つの項目でまとめられているが、そこに至る前、報告書5ページ目に、「労働基準関係法制の意義を堅持しつつ、 労使の合意等の一定の手続の下に個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能とすることが、今後の労働基準関係法制の検討に当たっては重要である。一方で、現在の過半数代表(過半数労働組合及び過半数代表者)を軸とした労使コミュニケーションには課題も多く、実効的な労使コミュニケーションを確保する方策も必要となる。」と書かれており、デロゲーション方式拡大、労使コミュニケーションの改革が方針であることがわかる。
また、報告書28ページの「時間外・休日労働時間の上限規制」の項では、「現時点では、上限そのものを変更するための社会的合意を得るためには引き続き上限規制の施行状況やその影響を注視することが適当ではないかと考えられる。」という記述があり、やはり上限を変更することについては既定路線となっているようだ。今回の報告書には、これ以上のことはデロゲーション方式に関しては書かれていないので、上の記述の通り、我々も動向を注視して、誤った方向に進まないようにしなければならない。
労使コミュニケーションについては、報告書では、過半数組合のない事業所の、過半数代表者が機能不全になっていることが多いことを共通認識として、過半数代表者の適正選出と基盤強化に向けて、7項目の改善案を提示している。これについて、森崎巌氏は、これらの案はきわめて重要な課題としながら、過半数代表者の強化が、デロゲーション方式の促進(組合に依らず、企業が個人と話し合いがしやすい環境作り)を目指しているなら、非常に有害だと指摘している。また、過半数組合のあるところでも組合と別に従業員代表を作るという制度も報告書中で話題に出ているが、森崎巌氏はこれについて、諸外国との違いを把握して、慎重に検討すべきとしている。例えばドイツでは、従業員代表を労働組合と別に制度化し、労使共同のパートナーと位置付けることで、従業員代表への使用者による経費援助を合理化しているそうだ。日本でも、導入のためにはそういった理由が必要だということである。
その他報告書では、労働者性や労働時間について、様々な事が話し合われており、森崎巌氏からも種々レクチャーがあった。
そして、報告書の今後の方針として、労働時間規制、過半数代表者などの早期に取り組むべきとした事項については、労働政策審議会で議論を進め(森崎巌氏は2026年に法案上程と踏んでいる)、労働者性、従業員代表制などの中長期的に検討を進めるべきとした事項については、引き続き学術的な検討を進めるとした。
そして、2025年1月21日から、労働政策審議会での議論が開始されているが、当然と言えば当然の話で、労働時間規制、労使コミュニケーションの改革については、労使の意見が大きく対立している。
高市早苗新自民党総裁が、就任挨拶で、働いて働いて働いて参りますと言った。それは結構なことだが、労働というものに対して、長時間労働が美徳であり、それを望まざるを得ないという法律、制度ができてはならない。積極的に意見をしていかないといけない。

3.弁当とけがは手前持ち 芸能界にセーフティネットを築く

森崎めぐみ氏

次に、森崎めぐみ氏の講演である。彼女は、芸能従事者(この言葉も彼女が作った)向けの、初の労働者災害特別加入団体である日本芸能従事者協会を立ち上げた方である。
彼女は、新宿の劇場で生まれた。幼い時から劇場に出入りする演劇や歌劇の関係者とふれあい、その実態を生で体感してきた。そして、彼女自身も俳優になり、様々な作品に出演し、映画に主演として出たこともあるという。人生を通して芸能界に触れてきた人だ。
また、母親が、昔、化粧品メーカーのOLをしていた。女性の働きやすい職場だったらしく、また、現在は厚生年金で暮らしている。つまり、森崎めぐみ氏は、保険を含め、社会的に守られている人と、そんなものない人の両方を見てきたのである。そのような経験から、芸能界の人も、実は何か補償を得たいと思っていたり、それを求めて行動したりしないのだろうかと常々思っていたとのことだ。
その後、芸能活動を続ける傍ら、芸能従事者の権利に関する草の根運動を続けた。そして、2021年4月の労災特別加入制度拡大にて、芸能従事者も特別加入の対象となったことに合わせて、彼女は、日本芸能従事者協会を立ち上げた。
この団体は、その行動理念として、①セーフティネット、②健全な心身、③適正な作業量と収入(今はまとめて適正な取引としている)、④安全な環境作りの4項目を掲げている。

①のセーフティネットというのは、危険な仕事に対する保険である。
彼女は、劇場にいたころや芸能の仕事を通して、危ないことをしている人を多く見てきた。逆さ吊りになったり、暗い舞台で安全柵もないような場所で動き回る役者や、人体切断するマジシャン、火を吹いたりする大道芸人などのパフォーマーはもちろん、地上十数メートルのところでライトを動かす照明さんなど、いわゆるスタッフと呼ばれる人たちも、危険なことをいろいろやっている。また、火を吹く芸は、喉にうまいことカミソリの刃を縦にして仕込むと火が吹けるという、言葉ではどうなっているのかさっぱりわからないことをするらしい。そして、初心者の頃は、それでやっぱり喉を切ってしまうことがあるとのことだ。芸能界でよくいわれる言葉に、弁当とケガは手前持ちというものがあり、ケガをするのは自己責任という風潮が根付いているとのことだが、このように、ケガが自己責任どころか、ケガして覚えないと仕方ないみたいな芸もあるぐらいなのである。
また、芸だけではなく、事故も多数ある。ロケ番組などでは当然、スタジオ外でのことなので、予期せぬことが起こるし、移動時間も長く、交通事故も起きやすい。また、時代ドラマの撮影で、殺陣のシーンがあった時に、模造刀の代わりに、資料用に置かれていた真剣が使われて役者が亡くなったという事故もあったらしい。
そのような仕事をしておきながら、彼らには労災保険が適用されなかった。徒弟制や家業で営んでいるために適用外だったり、契約によるフリーランスとみなされていたりで、労働者ではないとされていたのである。
実は、芸能従事者を、農作業従事者等と同じ、特定作業従事者とみなすよう、特別加入制度の拡充を求める声は、1970年代からあったとのことである。当時は改正にならなかったが、コロナ禍でフリーランスへの労災適用が世間の話題に上るようになり、今ならということで、記者会見を開いたり、研究会に要請を出すなどの活動をした。そんな森崎めぐみ氏らの運動の結果もあってか、2021年4月の労災保険特別加入制度の対象者に、芸能従事者が盛り込まれることになったので、早速、日本芸能従事者協会の中に、「全国芸能従事者労災保険センター」という芸能従事者向けの特別加入団体を立ち上げ、彼らが労災補償を受けられるようにした。
また、芸能関係でフリーランスをしている人は、その能力を生かして、副業で別のフリーランス業を営んでいることも多い。美術、スポーツ、研究者、通訳、ジャーナリスト、執筆業、放送業。とりわけ、歌や楽器、ダンスの指導などのインストラクター業はよく営まれている。そういう人に対して、副業での災害も労災保険を受けられるように、2024年11月にできたフリーランス法に従って、「フリーランス安心ネット労災保険」という団体を立ち上げた。こちらはまだ東京労働局申請中とのことだが、さきほどの全国芸能従事者労災保険センターに加入済みの人は、無料で入れるようにしているとのことである。お得!

②の健全な心身について。これは、さきほどの危険な仕事でもケガをしないようにすることに加えて、長時間労働や、パワハラ、セクハラ等のハラスメントへの対応である。
まず長時間労働について。2023年2月~5月にかけて、日本芸能従事者協会が行った、総勢245名が答えたオンラインアンケートでは、「長時間労働にならないためのルールがありますか」という質問に対して、「ない」が64.3%、「わからない」が24.1%。「徹夜で仕事したことがありますか」に対して「ある」が66.7%。「1日の最長労働時間は?」という質問には、「13時間以上18時間未満」が34.0%、「18時間以上24時間未満」が18.9%、「24時間以上」が20.9%となっている。88%の人が長時間労働にならないためのルールと無縁で仕事し、66%の人が徹夜で仕事したことがあり、39%の人が18時間以上ぶっ続けで働いたことがあるということである。私も、メーカーに勤務していた頃、26時間程度ひと続きで働いたことがあるが、誠にしんどいものだった。当時は、それを命じた上司に対して、かなり物騒な思いを抱いたものである。今思うと、まあまあまともな精神状態ではなかったように思う。本当にストレスだったのだろう。
ハラスメントについては、同アンケートにて、「仕事中にハラスメントを受けたことがありますか」について、「ある」が61.2%、「見聞きした」が21.5%。82%の人が、ハラスメントを体験、または見聞きしているということである。また、彼女自身が体験してきたことで、子役にペコペコ頭を下げる大人たちや、かと思えば、広告代理店の接待のために、ひょいひょい10代の女性スタッフやタレントを宴会に同席させるプロデューサーなど、去年問題になったフジテレビの接待のようなことも日常的に行われていたとのことだ。
そういったことに対して、まずはハラスメントに対する相談窓口の設置や、場合によっては労災の準備、加えて長時間労働やハラスメント予防のためのセミナーや啓発のための講演、また、過労死で亡くなられた方の遺族のために、グリーフケアを目的とした集まりを行ったりしている。

③適正な作業量と収入(適正な取引)については、芸能界にはびこる無茶苦茶な契約や、そんな契約を軽々に結んでしまう風潮についてである。
軽々に結ぶ話については、彼女の経験で、ディズニー映画のファインディングニモで声優をした時、この仕事に対する英語で書かれた契約書が、スタジオで突然配られて、その場でサインしてくださいと言われたということである。そして、しょうがないので必死に読んでいると、周りのスタッフに笑われたということだ。なんだ?と思ってムッとしていると、そんな契約書真面目に読む人なんていないよと言われたとのことである。内容は、例えば、よそで許可なくこの声でしゃべらないこと、それを破った場合は訴訟うんぬん、というような結構怖いことが書いてあったそうだが、周りはそれをあまり真剣には取らない。
無茶苦茶な契約の例については、タレントと事務所を例にして色々話してくれた。まず、様々な罰金制度である。タレント事務所などでは、スキャンダル一回で、タレントの大物加減にもよるが、50万円とか100万円とかの罰金がある。まともな会社は、たとえ社員に責任があろうが、仕事上の損害を社員に求めたりしないが、タレント事務所ではそれが普通にある。
さらに、芸能の事務所によくあるという2年ルールである。事務所を辞める時は、2年間、別の事務所に所属することはできないというものだ。一般的に、会社を辞めた時、2年間別の会社に就職したらダメなんてあり得るだろうか。森崎めぐみさん自身も、2、3回事務所を変えているが、そのたびに2年間仕事が無くなったそうだ。これは、使う方も辞めたのをわかっていて、2年間使ってくれなくなるそうである。
そして、芸能活動でできた成果物の権利である。タレント自身の肖像権や著作権、歌や音楽、出演番組や、最近では動画など、全ての権利は事務所に帰属するという契約である。だから、歌を出しても本を出しても、その印税報酬は事務所に入り、タレントにはそこから給料として払われる。当然、辞めるとその後の報酬は無しである。
ちなみに、そういった権利に対する報酬がしっかりしているアメリカでは、例えば人気アニメのスポンジボブを1話30分再放送しようとすると、権利者に支払うお金が3000万円にものぼるそうだ。
そんな無茶苦茶な契約や、それらに対するリテラシーの低さに対しては、相談窓口を設けたり、使用者従業員ともに、フリーランス法や契約ガイドラインなど、適正な契約についての勉強会を開いたりしている。

④安全な環境作りは、①や②で書いたそもそも危険な環境や、スタッフの高齢化、少数化、気候の変化などにより顕在化してきた危険な職場環境についてである。
芸能界の裏方スタッフは、若い人が減っており、50代以上が普通になってきている。そうすると、例えば今までは平気でやっていた地上15mでの照明仕事や、重たいカメラを担いでの長時間撮影なども、今までは大丈夫だったものが危険になってくる。また、近年では熱中症に関する対策も重要である。そういったことに対して、ガイドラインを作成しての周知等をしている。
このように、森崎めぐみ氏は、元々何の補償もなく、従事者が軽視されてきた芸能界に、様々な変化をもたらしてきた。一から何かを作るというのは本当に大変だっただろうし、講演の中で、労災特別加入団体を設立した当初は、同じ仲間のはずの芸能人からそんなん要らんと反発があったり、芸能従事者の権利などと言い出す森崎めぐみ氏を芸能界から抹殺する動きがあったりと、様々な苦労があったそうである。そんな中、これほどの大きな団体に育て上げ、精力的に芸能従事者の健康と安全を守ろうとしている行動力には感服するばかりだ。私達も、負けずに不当な環境で苦しめられている労働者たちの支援に力を注ぐ。

(事務局 種盛真也)

関西労災職業病2025年10月570号