2023年石綿健康被害ホットラインを実施~中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会●全国
2023年12月も石綿ばく露作業による労災認定事業場の公表にあわせて、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会による全国アスベスト健康被害ホットラインが14日・15日にわたって実施された。
今年も関西を中心に報道をしてもらえたおかげで、当センターだけで100件を超える相談が寄せられたが、一方、マスコミの関心が薄れ、読売新聞を除き、事業場一覧を掲載する全国紙がなくなってしまったことはたいへん残念である。
これまでは、一覧から勤務歴がある事業所を見つけて自らの体調不良の原因と結びつける方からの相談が少なからずあった。ウェブ上で公開する、というのが現代の一般的な方法かもしれないが、新聞の一面を使った一覧は、ウェブ画面のスクロールや検索とは異なる気付きがあるし、紙面全体を使う迫力はウェブでは到底出すことはできない。それでも毎日新聞が石綿被害に対する救済活動の特集記事を組んでくれたおかげで、読者からの反響も大きく、相談につながったこともあり、来年も同様に社会的に重要な案件を伝えていきたい。
さて今回は、建設アスベスト給付金制度が始まって、自分や家族の肺疾患と石綿を結び付け相談される方が増えてきた、という特徴が見られた。この傾向は、被災者や家族に補償をするだけではなく、石綿被害の全容を把握するうえでもたいへん重要である。特に救済制度のみを利用していた方やご遺族からの相談は多く、職歴で建設業に従事していたということが明らかなことから、環境再生保全機構から案内が届いたことが発端となっている。職歴を伺うと、やはり労働者性は否めず、改めて遺族特別給付の請求をすることになった事案、労災請求を行うべき事案などが目立つ。
また、石綿健康管理手帳を取得されていて、目立った自覚症状のない方の相談も複数見られる。普段の検診では肺がんや中皮腫といったすぐに治療を要する疾病と比較して見逃されやすい石綿肺所見もあるかもしれない。この場合は、胸部レントゲン写真やCTをお預かりして石綿肺所見の有無を確認する。重度の石綿肺所見が見られるものは少ないものの、石綿肺が疑われる案件は積極的にじん肺管理区分申請につなげていきたい。
今回のホットラインでは、国家公務員の中皮腫事案について相談があった。被災者は、中皮腫の原因は石綿であるとは聞いていたものの、業務で石綿に直接的なかかわりはなかったと思っていたためこれまで気に留めてこなかったが、「建設アスベスト」、「吹付」という言葉を耳にした元同僚が、50年以上前に被災者と一緒に石綿吹付作業があった施設の建設に立ち会い、吹付現場に入場したということを思い出した。その施設の吹付材除去の記録も入手し、常時業務で立ち入る施設でもあり、今後当時の仲間を総動員して証明にあたろうという話に進展している。
建設アスベスト給付金の対象期間に建設作業に従事していなくても環境省から建設アスベスト給付金の案内が送られてくる人もいて、改めて業務上外の認定を受けるべく労災請求をするきっかけになる。発症時にはすでに引退をしている、自営業であるなどを理由に労災請求をしてこなかったが、建設作業従事者は、ある程度の期間を親方の下で修業したのちに独立するものの、独立後もその実態は労働者であることが少なくない。加えて中皮腫であれば、労働者期間が1年あれば業務上認定を受けることができることから、労災保険を請求することが本筋であることも多いのではないだろうか。
今回はフォローすべき案件が例年以上に多く、適切な救済につなげていきたい。
関西労災職業病2024年3月552号
コメントを投稿するにはログインしてください。