三次会のセクハラ行為による精神疾患、再審査請求へ●大阪

Aさん(女性)は、2019年4月にソフトウェア開発等を業とするB社に入社、大阪市内の西日本支社に配属された。同年6月には社内発表会が東京で開催されることとなり、支社の社員全員で参加、終了後会社主催の懇親会に参加した後、会社関係者4人で食事をし、さらに3次会としてガールズバーに行くことになった。ガールズバーでは、他の男性上司らの前で女性店員と触り合いなど様々な行為をさせられることになった。

Aさんはその後、この日の出来事が頭から離れなくなり、涙が止まらない、夜に眠れないなどの症状が現れたため精神科医を受診したところ外傷後ストレス障害と診断された。

その後の療養、休業について、Aさんは業務上疾病として労災保険の請求を行ったところ、大阪中央労働基準監督署長は翌20年5月に不支給処分を行った。これを不服として審査請求を行ったが、大阪労災保険審査官は、22年5月になって棄却決定を行った。

不支給処分と棄却決定の理由は、ガールズバーへ行くという行為が、自由意志であってAさんの意向によるものであり、3次会はすでに業務との関連性を失っているという判断から、業務起因性を判断する対象としなかったことからだった。

しかし、Aさんが3次会に同行したのは、「その日の夜はいろいろ連れて行くところがあるから…」と言われており、これにしたがったためだった。Aさんはまだ入社後2か月あまりの有期雇用の立場であり、正規雇用ではなく、権限を持つ上司の意向にかなうように、行動するのは当然のことだった。

精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会の2010年の報告書でも、留意事項として「被害者は、勤務を継続したいとか、行為者からのセクハラの被害をできるだけ軽くしたいとの心理などから、やむを得ず行為者に迎合するようなメール等を送ることや、行為者の誘いを受け入れることがある。」と指摘している。

また、出張中については出張過程全般について事業主の支配下にあると言ってよいというのが業務遂行性判断の原則であり、いわゆる附随行為の判断は広くなるとされている。

さらに、本件でAさんと会社で争われている民事裁判において、会社側は3次会での出来事を民法第715条の「事業の執行について」の要件を満たすと認めており、裁判所も判決で同様の判断を示している。

3次会について業務遂行性は認められないとした原処分と審査決定について、Aさんは到底納得できるものではなく、この6月に再審査請求を行った。3次会の業務遂行性とハラスメント行為の評価について、Aさん側としてはあらためて明快な主張を行うことにしている。

関西労災職業病2022年8月535号