倉庫内の石綿問題の取り組みー労働者2名に胸膜肥厚/全港湾大阪支部安全衛生委員会●大阪

私がD社に就職した1984年頃は、アスベストの危険性が認識されておらず、一般に使用されている建築資材であり、危険性の有無を疑う余地はないと思っていました。

その後、2005年に兵庫県尼崎市で発生したアスベスト健康被害、いわゆる”クボタショック”以来、労働安全衛生法施行令が改正され、アスベスト含有製品の製造・使用などを禁止する法が2006年9月1日から施行されました。

入社後の1990年頃にD社倉庫壁面の、むき出しになっている断熱材を壁材で封じ込める工事が行われましたが、その後、2016年に封じ込め工事部分の壁材の劣化を機に、職場を環境測定した結果、倉庫内壁面にアスベスト(クリソタイル)が使用されている事が明らかになりました。更に詳しく調査した結果、レベル1の石綿含有吹付け材であることが分かりました。

アスベストとは、天然に産出する 繊維状鉱物で、青石綿(クロシドライト)と茶石綿(アモサイト)そして白石綿(クリソタイル)があります。

日々の作業の一環として、倉庫壁面のアスベストを単なるホコリと思い、マスクも着用せずにエアーブローで吹き飛ばして掃除していた結果、職場内でアスベスト被ばくをしていました。
その後、数名が肺に違和感があり、みずしま内科クリニックを受診した結果、私を含め2名が “胸膜肥厚”と診断されました。

安心して働き続けられる職場環境を整備する為、労使で協議し空気中のアスベスト濃度調査を実施、倉庫貸主とも、アスベスト撤去作業の交渉を重ねましたが、施工範囲が膨大であるのと、撤去作業に物理的な問題があり、現在は封じ込め工法で対応しています。

合わせてアスベスト健康被害発症時の企業補償等の交渉も行っています。

アスベストを吸い込むと、10年から数十年後に肺がんや悪性中皮腫などの重い病気にかかる恐れがあると言われています。

現在ではアスベストの使用が全面禁止となっていますが、思いもよらない過去の職歴などが原因で被ばくしている危険性もあります。

私の所属する全港湾大阪支部安全衛生委員会では1985年、港湾にじん肺法が適用されて以降、中央本部・関西地方本部方針に基づいて、1986年よりじん肺一斉検診を実施してきました。
レントゲン検査の結果、アスベスト由来による疾患を発見された事例もあります。

今後も健康管理の一環としてじん肺一斉検診の取り組みを進めていきたいと思います。
(全港湾大阪支部 熊本隆)

関西労災職業病2022年6月533号