元建設労働者の給付基礎日額、特別加入で低額に/三重
昭和35年から平成20年まで左官として働いてきた被災者は、平成17年頃から階段を登った際に息苦しさを感じるようになり、平成19年末には左の胸から首にかけて息苦しさを覚えたことから病院で検査を受け、肺がんに罹患していることが明らかになった。
病院からアスベストばく露の指摘を受け、わざわざ他の医療機関で詳しく聞き取りをした結果、たいへん詳しいばく露状況が明らかになり、間もなく労災としての療養・休業が認められるに至った。
ここまでは問題なかったが、特別加入をしていたことを理由に常用の作業員でありながら給付基礎日額が5000円と異常に少ない。本人に対する聴取書を見ると、日給14000円で朝8時から夕方5時まで働き、休憩時間も昼の1時間に、午前10時および午後3時の10分休憩があること、親方の指示で毎日現場が決まることが記録されている。
併せて一人親方として日給5000円で特別加入していることも記されているが、どのような労働実態であったのか、所轄労働基準監督署は十分な調査を行っていなかった。むしろ、特別加入を被災者に勧めた業者が、積極的に被災者が一人親方であるという書類を提出していた。被災者としては、詳細なアスベストばく露状況を作成してくれた業者が悪いようにするとは思っていなかったのだろう。しかし、業者の担当者が勤め先である親方の元に事業主証明を求めて訪問した時の話よく覚えていた。
おそらく労働実態を知っていた業者は親方に最終ばく露事業場について尋ねに行ったか、あるいは直接最終ばく露事業場である元請に証明を求めたことでこの親方から呼び出しを受けたのかもしれない。この担当者が「あの人には二度と会いたくない」と心底疲れ切った顔で言っていたという。親方は特別加入を勧めて業者を紹介していることから、親方に対して強く言えなかったのかもしれないし、被災者自身も親切な業者が悪いようにするとは思いもよらなかっただろう。
決定から10年以上経ってしまったが、今後は審査請求を通じて日額の修正を目指していく予定である。(酒井恭輔)
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