情報開示請求で判明した堺市の公文書隠ぺい(「それぞれのアスベスト禍(78回)」)

「それぞれのアスベスト禍(78回)」

情報開示請求で判明した堺市の公文書隠ぺい

2017年12月19日、私は堺市と大阪府に対して行政文書の開示請求を行った。開示請求した文書は、堺市が実施した「堺市北部整備事務所」における3つのアスベスト除去工事の報告書だ。この工事は2017年1月に大阪府堺市と職員4人が大気汚染防止法(事前調査義務)違反の疑いで書類送検される原因となった市有施設におけるアスベスト含有煙突の違法解体問題で、私の大きな関心事でもあった。

私は堺市から開示の連絡を受け、同27日に3つの報告書についてA4用紙で計67ページ(表紙含む)のコピーを入手した。

年末の慌ただしさもあり「お正月が明けてからゆっくり見よう」とそのままにしていた書類を、2018年1月4日に見た。すると不自然な箇所があることに気づいた。一冊の報告書の13ページ以降はページ番号がなくなっている。あとは分析の顕微鏡写真があるだけだった。

堺市のホームページ(飛散事故の健康リスクを調べている懇話会の資料など)では現場写真もあるのに、なんでこれだけ現場写真がないのか不思議に思った。そして、その後のページでは通し番号が打ってないことも不可解だった。

堺市建築課の担当者に電話した。その答えは「最初はあったのですが」という。

「なぜ現場写真が無くなったのか?」との質問には歯切れの悪い答えしか出てこなかった。数回のやりとりで、「現場写真は業者が持っているので公文書ではありません。ご希望ならば業者を市役所に呼ぶので、直接コピーを依頼してください」というとこになった。

2018年1月19日、堺市建築課を訪問して工場業者の「日野建設」担当者と会った。日野建設の持参した3冊の資料にははっきりと現場写真があり、そこには煙突内にアスベストが残存している(除去残し)写真が数枚もあった。また写真の横には「取り残しがある」という分析業者の指摘がある。

堺市の説明では、「今回の調査(濃度測定)には直接関係ない文書だったので、業者から報告があったが削除してもらった」という。

「え~!アスベストの取り残しがある、という指摘を簡単に削除できたのですか!」と、市側の対応の悪さに呆れてしまった。2年前に大気防止法違反で書類送検されても、まったく改善されていないばかりか、懲りてもいない姿勢に怒りを覚えた。

そのような中で、堺市のアスベスト問題で尽力頂いている長谷川俊英議員が堺市議会に数度にわたり質疑を行ってくれた。

堺市本会議で長谷川議員が「堺市によるアスベスト『取り残し』隠ぺいは私文書偽造罪に当たる可能性がある」と、市による違法行為の疑いがあると追及した。

答弁に立った窪園伸一建築都市局長は「(2017年)5月中旬に測定会社から元請け業者を通じて提出された3冊の測定結果報告書の一部です。それは測定の目的と異なるものが添付されているという理由から合計34ページを濃度測定の現場状況写真とあわせて取り外した」と手元の答弁資料を読み上げた。

こうした経緯を説明した後、「隠したと指摘される行為はいったい誰の指示でおこなわれたのか」と聞くと窪園局長は「私ども担当職員が軽々に判断して報告書から外すように元請け業者に指示した」と市建築部の指示による隠ぺいを認める発言をした。

堺市が隠ぺいを指示していたことが明確になった。そして竹山修身市長は「2度にわたって不安を与え、申し訳ない」と謝罪した。

さらに「アスベストは市民の安全・安心・生命に関わり、きちんと情報提供すべきだ。保育園・近隣住民・患者の会ほか市民に2度にわたって不安を与えたことは申し訳ない。今回の事象を職員一人ひとりが肝に銘じ、市民の安全・安心に資するよう徹底する」と答弁した。

とんでもない情報隠しが、一市民の情報公開請求で得た資料に疑問を抱いて明らかになり、市当局は「測定業者と協議せずに削除したのは不適切だった」と認めたのだ。

しかし、測定業者が会社印を押して提出した「測定結果報告書」を、作成者に断りもなく変造することは、刑法の私文書偽造罪に問われる可能性がある。財務省による森友学園問題が国会で紛糾しているが、堺市でも似たような問題が起こっている。

3月22日、長谷川議員から総括質疑がされた。その際「職員の危機意識が低かった」など、建築都市局が答弁した。質疑の最初に大綱質疑以来の議論の経過を踏まえての総括を要求すると、建築課長が「除去残し」の指摘を確認しなかったことや、測定結果報告書の写真を外したこと、その結果市民に重要情報が公開されなかったという、3つの業務上の過ちを認めた。

また、建築都市局長は、「公文書公開請求がなければ、除去残しの指摘も明らかにならなかった」、「測定会社に報告書の再作成を依頼する」、「専門家の意見を聞き、早急に煙突内部を調査、確認する」、「除去工事の完了検査のあり方も関係部局に働きかける」と発言し「担当者のアスベストに対する危機意識が低かった。今後、意識を高め、情報の重要性も認識できる力を養う」などと反省の弁を語った。

今回は堺市の問題だが、昨年12月19日に同時に開示請求を行った大阪府立金岡高校のアスベスト除去工事も大きな問題があることがわかった。

今年は大気汚染防止法が改正される予定だ。「民間工事での完了検査」や「リスクコミュニケーション」についてもっと精査し、取り組まなければいけない。

(機関誌2018年4月号より)