第13次労働災害防止計画、今後のあり方とは

今後の検証が大事 労災防止の数値目標

第13次労働災害防止計画始まる

第13次労働災害防止計画が公表され、4月より始まっている。

労働災害防止計画は、労働災害が急増していた1958年に第1次の計画が策定されて以来5年ごとに国が策定している。労働安全衛生法に規定されており、今回の計画期間は2018年4月から2023年3月までとなっている。

労働災害防止計画といえば、目標を設定して対策を計画的に講じるものということになるが、ここ数回の計画では具体的な数値目標を設定することが多くなっている。とくに10年前の第11次では、5年後の平成24年に、死亡者数で20%、死傷者数で15%などの目標が掲げられ、他の重点目標でもメンタルヘルスケアに取り組む事業場の割合を50%以上にするなどが掲げられた。

今回の第13次では、さらに具体的な数値目標が設定されている。

注目される課題ごとの目標数値

2017年の速報値で925人となっている死亡災害を2022年までに15%以上、118,079人の死傷災害を同じく5%以上減少させると数値を設定する。さらに業種別の重点目標として、建設業、製造業、林業で死亡者数15%減に加えて、第三次産業関係では死傷災害の年千人率で5%減という数値を設定した。就業人口が増加している社会福祉施設関係など、単純数値の設定では意味がないので千人率という指標を使ったというわけだ。

さらに「その他の目標」として、メンタルヘルス対策関連として、相談先がある労働者の割合、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場割合に加え、ストレスチェック結果の集団分析結果を活用した事業場割合を60%以上と数値設定した。50人以上でストレスチェックという法律上の義務だけが重要視され、依然として病気発見が趣旨だという誤解が一部にまかり通るなかで、職場改善にどう結び付けるのかという本旨に関わる数値が設定されているのが興味深いところだ。

また第三次産業と陸上貨物運送事業の腰痛件数と熱中症の死亡者数について、ピンポイントで目標数値を設定している。対策さえ講じれば防げる熱中症、多発要因がはっきりしていて対策強化が焦眉の課題である腰痛について、明確化させたことは評価できるだろう。

このような数値目標については、年ごとに点検を行い、追加の施策を実施するなどの取り組みが決定的に大切だ。

労働者以外の安全衛生にも言及

今回の第13次で、労働安全衛生対策の必要な分野として初めて明確に触れたと思われる部分がある。それは「1計画のねらい」で触れられている次のような一文だ。

「また、一人一人の意思や能力、そして置かれた個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択する社会への移行が進んでいく中で、従来からある単線型のキャリアパスを前提とした働き方だけでなく、正規・非正規といった雇用形態の違いにかかわらず、副業・兼業、個人請負といった働き方においても、安全や健康が確保されなければならない。

さらに、就業構造の変化等に対応し、高年齢労働者、非正規雇用労働者、外国人労働者、障害者である労働者の安全と健康の確保を当然のこととして受け入れていく社会を実現しなければならない。」

「働き方改革」が実は「働かせ方」の多様化にすぎないかのような最近の労働法制の動きがある一方で、枠外として規制の対象から外れてしまうグループの安全衛生対策が記述されることは、これまでになかった。その意味では評価できるものといえよう。

ただ、具体的な対策の内容については、目を見張る新たなアプローチがあるわけではない。たとえば、「個人請負等の労働者の範疇に入らない者への対応」として建設業における一人親方等に対して安全衛生教育を検討するなどをあげているだけだ。そもそも法的な対応の限界について、ふれているわけではない。もっと抜本的な対策につながる記述がされてもよいと思える。

制度改正につながる取り組みを

計画に掲げられた数値や取り組みについて、今後、十分に検証し、必要な制度改正などの取り組みが必要だ。

 

(機関誌2018年4月号より)