港湾施設改善と石綿撤去問題~全港湾大阪支部安全衛生委員会/大阪
2005年に兵庫県尼崎市で発生したアスベスト健康被害、いわゆる”クボタショック”は多数のアスベスト被害者が発生しているばかりか、工場周辺住民にも複数の中皮腫患者が出ていることが明らかにされたことなど、あまりにも有名な社会問題となっています。
また、我が国において重要な役割を担う港湾施設でありますが、主要な施設である岸壁を見ると、今後20年で供用開始後50年以上を経過する施設が全体の半数以上になるなど、高度経済成長期を中心に整備した施設の老朽化が急激に進行することとなります。
私たちが就労している大阪市大正区の大正第一突堤では毎年港湾施設の老朽化に伴う改善要請を行っています。
要請のひとつに、第一突堤6号~9号倉庫でアスベスト建材が使用されている部分が有り、事業協同組合を通じ、健康で働き続けられる職場環境を実現して行く為に、港湾局にアスベスト建材を使用している局管理の建物等について、全面かつ完全な撤去を要望し、2009年に大正内港でアスベスト撤去工事が行われました。
その中でも第一突堤6号倉庫は天井全面と壁の一部にアスベスト建材を使用しており倉庫内をO社とT社が半分ずつ使用している状況でした。
工事は壁面の撤去工事からはじまり、天井の工事へと進められました。
O社は倉庫の使用範囲を制限し、半分ずつ、縦二分割で工事を進め、T社使用範囲では、倉庫使用における作業の影響を少なくするために天井工事については天井から足場を吊り下げ、倉庫を上下二分割に分けて作業を行う”吊り足場工法”で工事を行いました。
工法の違いはありましたが、全ての倉庫でアスベスト撤去工事は無事に終了しました。
しかし、港湾局管轄の施設では撤去工事はすすめられていますが、プライベートバースや、旧建築法で建てられた倉庫などは未だにアスベストを除去しきれていない施設も有ります。
今年4月にアスベスト法が一部改正され、規制対象の拡大や、アスベスト調査結果の作成・報告・保存の義務化、違法なアスベストの除去作業をした際などは直接罰を新設するなどとしています。
全港湾大阪支部安全衛生委員会では規制以前にアスベストを荷役していた組合員OBの労災請求なども行っていますが、今後は関西労働者安全センターと情報を共有し、更なる運動を進めていただきたいと考えています。(全港湾大阪支部 藤原崇)
関西労災職業病2022年5月532号