厚労省が被ばく限度の改正で検討会/眼の水晶体は等価線量でも100mSv/5年かつ50mSv/年を限度に

労働安全衛生法にもとづく省令である電離放射線障害防止規則に定められた、 被ばく限度の一部を改正する作業が進められている。厚生労働省は昨年12月21日に「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」を開催、以降、今年6月20日で5回を数えている。
現行の電離則は、「実効線量が5年間で100ミリシーベルト(以下mSv)を超えず、かつ、 1年間につき50mSvを超えない」 とする被ばく限度の原則を定めている(第4条)が、同時に「放射線業務従事者の受ける等価線量が、 眼の水晶体に受けるものについては一年間につき 150mSv、 皮膚に受けるものについては一年間につき500mSv」という特別の限度(第5条)も定めている。
これは第4条の限度が発がん等の確率的影響を考慮した限度なのに対し、 第5条は特に放射線に感受性の高い臓器について、等価線量という別の単位の限度を定めるものとなっている。 現行の限度については、国際放射線防護委員会(ICRP)の1990 年勧告にもとづくものだが、 その後2011年4月の勧告 「組織反応に関する ICRP声明」において、水晶体の等価線量限度についても「5年間で100ミリシーベルト(以下mSv)を超えず、かつ、 1年間につき50mSvを超えない」 とすることが妥当とされた。
勧告にもとづき、 政府の放射線審議会が我が国の法令への取り入れを検討、 「眼の水晶体に係る放射線防護の在り方について(意見具申)」 を昨年2月に関係各省庁宛てに通知した。 これを受けて、 検討が始まったというわけだ。

線量測定 ・ 算定基準も改正へ

同じシーベルト (Sv) という単位を用いる限度でまぎらわしいが、 実効線量 (第4条)と等価線量(第5条)と二重の限度になっているのは、 全身の被ばくの影響を扱う実効線量だけでは、 線種の違う放射線による臓器への影響をコントロールできないからだ。 そのため感受性の高い眼と皮膚について個々の臓器への影響を測ることのできる等価線量の限度を定めている。

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眼の水晶体については、 従来より感受性が高いと特別な限度があったのだが、2003年に白内障のしきい線量がより低い可能性があると指摘され、 2011年の声明に至ったという。
検討会では、 電離則第5条の限度の改正とともに、等価線量の測定・算定方法の規定を見直すことも議論されている。さらにこの検討会で注目されるのは、 そもそもの被ばく線量管理や記録の保存、 放射線防護の強化に関する議論が行われているこ とだ。
たとえば6月20日の第5回検討会では、「国家線量登録制度に関する検討状況について」と題する報告も行われている。このなかで個人線量の測定を業とする大手4事業者による個人線量測定機関協議会 (個線協)によるデータとして、違法状態が示唆される年20mSv超の被ばくをした従事者の数が、 平成29年度で202人となっていることなどを示し、 国家線量登録制度の必要性が議論の俎上にあがった。

線量登録制度創設が議論の俎上に

また、放射線業務従事者が最も多い医療現場での被ばく規制は、 労働安全衛生法以外に医療法による規制も行われている。 もし労働基準監督署が、 法定限度を超過する被ばくをした労働者がいる旨の情報を把握したときは、 保健所に情報提供して医療法に基づく立ち入り検査と指導を行い、 その情報を適宜労働基準監督署に情報提供する等の連携を図るなどという取り組みが事務局より紹介されている。
ただ、 ここ数年の運用状況をみても、電離則違反で書類送検となった保健衛生業の事案は皆無(2014~2016)であり、先ほどの個線協の202人が法に触れる可能性というデータを考えると、 規制の曖昧さがよく分かる。
こうした状況は、現在も継続して開かれている放射線審議会の議論の中でもとりあげられている。
現在の放射線審議会は、 女性の線量限度の問題と健康診断の取扱いをどうするかという議論がされているところだ。 6月17日の審議会では、女性の妊娠と被ばく限度の規制の関係をどのように扱うかという問題について、 妊娠の申告と規制の時期的関係についてのデータがどこにもなく、 検証しようもない状況が明らかになっている。そうした議論のなかで、複数の委員から、線量登録制度がなく、線量管理の実態が見えていないという問題点が指摘されている。
電離則の改正の議論とともに、被ばく線量の登録制度の創設が焦眉の課題といわれながら、 ほとんど進んでこなかった状況から、 制度の議論が行われる検討会や審議会でようやく俎上にあがるようになってきた。 今後、 この議論の進展に注目する必要があるといえる。
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