はつり工の全身性強皮症、労災認定が課題/大阪

近年、はつり作業に従事してきた方々から振動障害の相談が増えている。今日
のはつり作業では、コンプレッサーからの圧縮空気で稼働する振動工具を使用す
る。圧縮空気を利用することによって1分間に1000~1400もの打撃をコンクリートに与えることが可能になり、破砕を容易にすることになった。鑿と槌で作業を行っていた時代と比較して、誰でも効率よく作業を進めることができるようになったのである。
しかし、たとえばコンクリートブレーカーは鑿部分だけでも数kg、本体を合わせると30kgから40kgに及ぶ重量を抱えることから、その振動は身体に及ぼす影響も大きい。あるメーカーが試算している使用可能時間は1日1時間から2時間である。1日8時間労働として、常に工具が稼働しているわけではないが、それでも1日の稼働時間がそこまで短いということはない。
振動ばく露を原因とした振動障害が認められることはもちろんであるが、これらの相談者に共通して全身性強皮症が認められた。被災者のうち2名はすでに別の医療機関において全身性強皮症の治療を行っている。全身性強皮症とは、両側性の手指を越える皮膚硬化や、手指に限局した皮膚硬化に抗セントロメア抗体などの自己抗体が陽性であるときなどの場合に診断される。症状としては振動障害と同じように、血管障害から手が冷やされたときに指が白くなるレイノー症状が認められることもある。
振動障害の認定基準(昭和52年基発第307号)にも類似疾病として関節リウマチ、強皮症等の膠原病が挙げられていることから、古くから知られている話には違いない。また、海外ではすでに業務上疾患として認める国もあり、たとえば南アフリカ共和国では1974年に鉱山労働者法において職業病としてリストに挙げられている。
主治医によると振動障害を抱える被災者に全身性強皮症が認められることは、「全国的にも珍しいこ とではない」とのことだった。そこで問題にしたいことは、全身性強皮症が自己免疫疾患であり、環境因子としてシリカが確認されている点である。先述のとおりはつり工はエア工具を用いてコンクリートを破砕する。そのとき、振動にばく露するだけではなく、大量の粉じんにもばく露する。コンクリートには骨材として石英(シリカ)を含む砂利が多く含まれることから、粉じんがじん肺の原因となるだけではなく自己免疫疾患である強皮症の原因にもなるのである。
近年では全身性強皮症は国の指定難病であり、悪性関節リウマチやANCA関連血管炎などの他の自己免疫疾患同様に医療費助成を受けることができることから、業務との関連を突き詰めて考える機会はあまりないかもしれない。しかし重症化することで生命に影響を与えるほどの臓器病変を引き起こすことがありうることから、強皮症のケースも積極的に労災請求し、問題提起をしていかなくてはならないと考える。(酒井恭輔)
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