熱中症学習交流会開催/真夏の作業現場の実態を報告

近年、 夏の暑さが尋常ではない。 熱中症は屋外作業に従事するあらゆる労働者共通の問題であり、厚生労働省では「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」 と銘打った予防対策キャンペーンを実施している。第13次労働災害防止計画においても、計画初年度に当たる2018年からの5年間において、 2013年から2017年までの5年間に死亡した97人から5%減少させようという目標を設定している。
一方、平成30年度のみの数値を見てみると、死傷者数1178人(うち死亡者28 人) と、平成29年度と比較して死傷者数、死亡者数ともに2倍を上回っている。 このような背景を踏まえ、 関西労働者安全センターでは「熱中症学習交流会」を開催した。今回は、建設、港湾など屋外で働く労働者を組織する労働組合から参加者を募り、 作業現場での熱中症対策や、 熱中症罹患時の対応などについて意見交換を行った。

「熱い」現場

船舶への荷積み ・ 荷下ろしについては、温度による暑さだけではなく、 太陽光に照らされた鉄鋼や甲板から照り返される輻射熱 (ふくしゃねつ) にさらされたり、 風のまったく通らない環境で働き、 室外機から出る排気ですら涼しい風に思えるくらいだ。 建設現場においても同様で、 防音ネットで覆われた建設現場内の場合は、 さらに風通しが悪く、 あるいは粉じんが発生する中で作業をしなくてはならない。
また、 トラック労働者も、 運搬先の構内や路上での待ち時間にエンジンを切る様に指示されることでエンジンの熱で車内の温度が上がるという。

熱中症予防対策

まずは熱中症にならないための取り組みはどうなっているだろうか。
全港湾大阪支部安全衛生委員会のFさんは各分会に対し、 周知活動の徹底を奨めている。 全港湾安全衛生委員会による分会職場での安全パトロールで、 各分会の熱中症対策を聴取りし、その結果を全体でシェアできるようにしている。 また、 現場においても水分摂取、 こまめな休憩を呼びかけて、 さらに注意喚起のポスター、パンフレットを配付している。 懸賞付き安全標語 (表紙写真) というユニークな取り組みもある。
同じく全港湾のHさんによると、現場では吸水・速乾力の高いドライシャツが導入されている。 汗が絞り出せるほどの湿ったシャツを着たまま作業を続けると、水分を含んだシャツの重さや放射される熱で体力が削られるためである。 そのほかにも、水、氷、冷やしたタオルをクーラーボックスに入れておいて、 体を冷やせるようにしている。 労組で要求して船に扇風機を設置させ、 風を巡回させる工夫も施されている。
建設現場からは、 2例が紹介された。
近畿コンクリート圧送労組のSさんは、 大手ゼネコンの現場を例に出し、 全身を防護する空調服の着用が義務付けられていること、朝礼時にWBGT値(暑さ指数)の確認、飲料水補給の確認、監督による現場管理の一環として体調不良者の発掘が盛んに行われていることを報告した。 全港湾建設支部のKさんは、屋根施工時の工夫として、空調服、 サングラスを装着させて、 1時間毎に休憩を取らせて、休憩時間中に日陰に座り込めるようにテントを設け、 スポットクーラーやミストシャワーなどの機材の使用のほか、塩飴、スポーツドリンクを入れたクーラーボックスを用意していることを紹介した。
また、 関西労働者安全センターの中村猛さんからは、韓国での事例として、 オートバイ配送の労組が夏の安全配達料 (危険手当)の要求をしたこと、建設労組が酷暑時の作業中止の時間の賃金補填の制度化を求める運動をしていること紹介した。すでにソウル市では、 ソウル市が発注した建設工事において作業中止時の賃金を支払わせ、その賃金をソウル市が別途事業者に支払うようになっているという。

発症時の対応は

罹患しないことを重視することはもちろんであるが、 体調が悪くなったときにすぐに対応できるかどうかで重症化を防ぐことに繋がっていく。
前述の藤原さんが紹介してくれたのは「熱中症対応応急キット」である。 保冷バッグ内に入っているこのキットには瞬間冷却剤のほか、冷却スプレー、タブレット、飲料水が含まれ、 保冷バッグごと船内に投げ入れて救急処置ができるようになっている。
熱中症は監督署への報告の際に、療養補償給付の請求書を作成するだけではなく、労災隠しにつながらないために、健康保険利用状況のチェックも行われている。

仕事に対するスタンスは?

暑さ故に早く作業を終わらせよう とする気持ちは誰もが持つ。また、現場作業は人の技術に依る作業であり、 できるだけ早く終わらせようという心理が働く。さらにチームワークを徹底させると、 自分の休憩が他の作業者の負担につながるこ とを考えればなかなか休憩に入ることができない。加えて、 早く終わらせることはそのまま作業者の技量を反映すると考えられることから、 率先して仕事を優先する作業者が現場を牽引するだろう。
ところがWBGT値に従って作業を中断すると、 まったく仕事ができなくなってしまう。「ばく露しない」ことを目的とした化学物質対策と異なり、「暑くない」ことを求めると、 すでに熱中症予防の項目で述べたような体を冷やすなどによってWBGT 値の軽減をするほかなく、 作業をしながら行うことに限界があるためである。
また、作業者が我慢する風潮も見られる。現場での注意喚起は毎朝行われているが、全港湾のHさんによると 「デッキマンやクレーンオペレーターは、 仕事の流れを止めないよう、トイレに行かずに済むように、水を摂らない者もいる」 という。

作業中止を徹底する規制が必要か?

事業者は、 このような労働者の自主性に頼って責任を放棄してはならない。 労働安全衛生法22条には、「事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない」として、第2項に「高温」をあげている。 事業者の義務として熱中症対策を講じなければならず、 違反には罰則もある。 WBGT値が限界にある作業場では作業をさせないということを、行政庁が主導してどこまで徹底することができるだろうか。
また、 現場で健康を守ろうとする意識も重要で、熱中症が生命にかかわること、治ったあとも後遺症のように体調不良が残ることもありうる。今後の職業生活に大きくかかわってくることなので、 一時的な病気と侮らずに罹患しないことを目標として、今後も労働組合との交流を通じて職場の工夫を集めていく予定である。
(201909_503)

<参考>

熱中症ゼロへ みんなの力で熱中症をゼロにしよう(一般財団法人日本気象協会)

https://www.netsuzero.jp/

環境省 熱中症予防情報サイト

http://www.wbgt.env.go.jp/

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