2018年度過労死等の労災補償状況を公表/今後、 認定基準改正が必要

厚労省は6月28日、2018年度(平成30年度) の過労死等の労災補償状況を公表した。(htps://ww.mhlw.go.jp/stf/new- page_05400.html)
脳・心臓疾患、精神障害ともに請求件数は年々増加している。 2018年度は前年度に比べて脳・心臓疾患では37件、精神障害では88件増加した(下グラフ参照)。 請求件数は、このように増加しているにもかかわらず、 労災認定の件数は年々減っている。
脳・心臓疾患の労災補償状況では2017年度(H29)請求件数840件、決定件数664件、支給決定件数は253件で認定率は38.1%だった。2018年度は請求件数877件、 決定件数689件、 支給決定件数238件で、 認定率は34.5%と3.6%も下がった。死亡事案でも認定率が37.8%と1.2%下がった。認定率が下がる傾向にあるのは、 原因を究明する必要があるだろう。 これが、 厚労省が力を入れている過重労働防止対策が功を奏して、請求件数が減少すればよいのだが、今のところ効果はわからない。
精神障害の労災補償についても、 2018年度は請求件数1820件で88件増、決定件数は1461件で84件減、支給決定件数465件で41件減、労災認定率は31.8%で1%下がった。表のように、労災認定率は2014年(H26)38.0%、2015年(H27)36.1%、2016年(H28)36.8%、2017年(H29)32.8%と推移している。元々低い認定率が更に下がっている。

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業種により認定の偏り !?

脳・心臓疾患の業種別状況を見ると、 最も請求・決定件数、支給件数が多いのは昨年と同じ「運輸業・郵便業」だ。請求件数197 件、決定件数174件、支給件数94件、認定率54%で、 認定された238件の内39%がこの業種の労働者とダントツの多さである。2番目以下は請求件数であげると、「卸売業・小売業」111件、「製造業」105件、「建設業」99件、「宿泊業・飲食サービス業」 76件、「医療・福祉」62件の順で、決定件数では、少し順番が入れ代わって 「製造業」 99件、 「建設業」 80件、 「卸売業・小 売業」78件、「宿泊業・飲食サービス業」57件、 「医療・福祉」 43件の順である。 認定件数 では、 請求・決定件数が5番目の 「宿泊業・ 飲食サービス業」 が2番目で32件、 認定率 も「運輸業・郵便業」 より高い56.1%だった。次が「製造業」28件、 認定率28.2%、「卸売業・小売業」 24件、認定率31.5%、「建設業」 14件、 認定率17.5%、 「医療・福祉」6件、 認定率13.9%の順になる。「宿泊業・ 飲食サービス業」 と 「運輸業・郵便業」 の認定率は50%を超えているが、ほかは31.1%から 13.9%と非常に低くなっている。「建設業」は2017年の25.3%からかなり低くなっている。「医療・福祉」については前年度2 件しか認定がなかったのが、 6件となり認定率も上がっている。
年齢別を見ると、請求、決定、認定件数どれもが最も多いのは「50歳から59歳」で88件認定されている。次に「40歳から49 歳」で85件の認定、次は「60歳以上」で41件あるが、請求・決定件数ともに2番目に多く210件のうち41件であるので、認定率は極端に低くなっている。確かに高齢になる程、 病気の原因と考えられるリスクは高まると考えられるが、 5分の1程度しか認められないのは気になるところだろう。 4番目は「30歳から39歳」の20件で「20歳から29歳」は4件だった。
時間外労働時間別では、やはり月80時間以上の時間外労働があったものが、 労働時間で支給決定を受けた223件の内208件で全体の93%を占めた。 160時間以上の極度の長時間労働の事案も19件あった。
ますます長時間労働重視の認定業務になっており、 しかもこのところ、 実質労働時間課の判断をするために、タイムカードなどの労働時間記録があったとしても、 労働の中身について、客観的な証拠を求めてくる傾向があり、 そういったことが今回の認定率の低下につながったのではないだろうか。
最後に就労形態別で、 これまでほとんどが正社員が占めていたのが、2018年度は 「パート・アルバイト」で認定が11件あった。決定件数は2017年とあまり変わらないが認定件数が8件増えた。 原因は分からないが、請求に対して認定される数が正社員に比べて極端に少ないので、どうなるか注目していく。

低下する認定率

精神障害の労災補償状況について、 労災認定基準が改定された時に少し高くなっていた認定率が改定前と同じまで下がってきている。 労災問題に取り組む各団体が危機感を覚えて、 厚労省に意見をしている状況にあり、厚労省も問題意識はいくらか持っているようであるが、 具体的に原因を分析するような事を行っていないのであまり熱意は感じられない状況だ。
業種別の状況を見ると、請求・決定件数の順では「医療・福祉」320件・255件、「製造業」302件・253件、「卸売業・小売業」

253件・199件、 「運輸業・郵便業」 181件・142件、「建設業」129件・107件、「情報通信業」93件・81件、「宿泊業・飲食サービス業」91件・65件となっている。支給決定件数では順位が少し入れ替わって、 「製造業」82件が最も多く、次に「医療・福祉」70件、「卸売業・小売業」68件、「運輸業・郵便業」51件、「建設業」45件、「宿泊業・飲食サービス業」27件、「情報通信業」 23件である。 昨年とほぼ同じような状況で、 医療福祉は請求が多いが認定される割合は27.4%と高くはなく、「製造業」の方が32.4%で認定件数も多くなっている。認定率で見ると「建設業」が高くて42.0%、「宿泊業・飲食サービス業」41.5%、「運輸業・郵便業」35.9%、「卸売業・小売業」34.1%の順になっている。
年齢別では、請求・決定・支給件数いずれも同じ順で、「40歳から49歳」597件・468件・145件、「30歳から39歳」491件・406件・122件、 「20歳から29歳」 332件・265件・93件、「50歳から59歳」326件・254件・81件となっている。働き盛りの40 代、 30代に負担がかかる傾向が出ている。
時間外労働時間別では、 465件の内112 件は労働時間以外の出来事で認定され労働時間数が確認されていない。残りの内時間外労働が1か月平均100時間以上あったとされたのは147件、 100時間未満で労災となった件数は206件だった。全体の31.6%の147件以外は、 1か月の時間外労働時間とは関係なく、 認定されたと考えられる。
心理的負荷となった出来事別の数字を見てみよう。 出来事別の請求件数は公表されていないので、決定件数と支給件数で見る。465 件の内55件が「特別な出来事」で支給決定されている。「特別な出来事」を除いて支給件数が多いのは、 「仕事内容・量の変化を生じさせる出来事があった」 と 「ひどい嫌がらせ・いじめ、又は暴行を受けた」でどちらも69件である。 どちらも決定件数も多く、「仕事内容・量の変化」は181件あり認定率38.1%、「ひどい嫌がらせ、いじめ」は178 件で認定率38.7%だった。 次に支給件数が多いのは「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」 で56件、 決定92件認定率60.8%。さすがに因果関係がはっきりしているためだろう。3番目は「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」で45件、決定68件認定率66.1%、4番目「病気やケガをした」36件、決定86件認定率41.8%。 5番目 「セクシュアルハラスメントを受けた」33件、決定54件認定率61.1%で、認定率が高いのは喜ばしいと思う。 認定基準を作るときにも特別にセクシュアルハラスメントの分科会で検討されたくらいだったので、 それが上手く機能していると思いたい。「強姦」などのひどいケースは「特別な出来事」に該当するので、 この項目には入っていないので、さほど外れた評価ではないだろうか。 6番目は「2週間以上にわたって連続勤務を行った」で25件、 決定43件認定率58.1%。 「事故にあった」「セクハラ」以外では、「1か月に80時間以上の時間外」と「2週間連続勤務」という労働時間数が過重である出来事のみが60%ほどの認定率であり、あとは1番多かった「仕事内容・量の変化」 と「ひどい嫌がらせ、いじめ」がそれぞれ38%であったが、他の出来事の認定率は低い。 毎回言及しているが、相変わらず1番決定件数が多いのは「上司とのトラブル」 で今回255件、 しかし支給は18件で認定率にするとわずか7%である。 これは上司によるハラスメントについて被災者の多くは「ひどい嫌がらせ」と訴えるのであるが、 その多くは単なる 「上司とのトラブル」 と判断されてしまいこの項目に入れられ、 しかもこの項目の評価は中程度なのでなかなか「強」の評価にならないためである。しかし7%というのは本当にひどすぎる。もうひとつ、 「退職を強要された」の項目は、強度Ⅲにもかかわらず、 決定19件の内支給は3件で認定率にすると15.7%である。毎年厚労省交渉で、労災補償課では 「退職強要」の判断が使用者に甘すぎるのではないかとして、 復命書を調べるように訴えているが変化がない。
最後に7月22日に大阪労働局も大阪の過労死等の労災補償状況をホームページ上に公表した。大阪の脳・心臓疾患の労災補償状況では、2018年は支給決定件数が11件増加して37件、認定率も6.4%上がって40.2%だった。 死亡事案についても支給が6件増えて11件、認定率19.3%上がって55%だった。 どういった原因があったのか局に聞いてみる必要があるだろう。
一方、 精神障害の補償状況については悪い方に変化があった。 支給件数は4件減った30件とそれほど変化していないが、 決定件数は6件増加してので、 認定率で見ると19.9%だった。 全国平均が31.8%なので、ひどく低い。2017年も23.4%で低すぎると労働局に話した。 大阪局はこのまま認定数を減らしていくつもりなのか、今後追求する必要がある。
2018年度の状況も善い変化が全く見られない結果となり、 我々運動側も力不足であると感じている。ハラスメント防止対策も措置義務程度の法改正で終わり、 なかなかハラスメントが減る様な状況になく、その上、労災保険という救済制度まで狭き門で労働者に厳しい状況は続いている。
(201907_501)

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