自治体非常勤職員の災害補償/ 労災保険適用の非常勤職員/ 労働基準との公平確保には条例が必要

地方自治体で働く非常勤職員には、 地方公務員災害補償法が適用されず、 本庁に勤務する非常勤職員には個々の自治体が定めた災害補償条例が適用され、 それ以外の非常勤職員には労災保険法が適用される。 なぜ本庁だけが別になっているかというと、労災保険法が「国の直営事業及び官公署の事業 (労働基準法別表第一に掲げる事業を除く。)については、 この法律は、適用しない。」 (第3条) と規定しているからだ。
本庁以外で働いている非常勤職員というとどんな人が想像できるだろうか。 実はこの労災保険が適用される人たちは、 ずいぶんたくさんいる。保育所で短時間の勤務をする保育士、学校の非常勤の先生、清掃の事業に期間を定めて雇用された作業員、 学童保育の指導員…。最近、報道されることが多い、 児童相談所の相談員も期間を定めて雇用されていて、 労災保険の適用となる人も少なくないようだ。
つまり地方自治体といえども、労災保険が適用される労働者の数は相当な数になっているのだ。労災保険だから、その地域を所轄する労働基準監督署に保険給付を請求するという民間と同じ手続きをすることになるので、公平、公正は大いに保証されそうに思える。 ところが実際はなかなかそうはなっていない。

そのままでは最低限が守られない非常勤の休業3日

労災保険の休業補償給付は、 休業4日目から支給されることになっている (労災保険法第14条)。 3日目までは、労働基準法で使用者は最初から平均賃金の6割を補償することが義務付けられている (第76 条)ので、こちらを適用する。要するに休業補償は2段構えになっているわけだ。
労災保険が適用される地方自治体の非常勤職員も、休業補償給付は4日目からで、3日目までは雇用している自治体が補償するのは当然のことだ。
一方、 常勤公務員の災害補償を定めた地方公務員災害補償法はどうかというと、「給与を受けないとき」 は最初から休業補償が支給される(第28条)ことになっている。だから3日目までの補償という問題は生じない。地方公務員法も「補償されなければならない。」(第45条)とあるだけだ。
非常勤職員の3日目までの補償は労働基準法上、 雇用している自治体に支払う義務があるわけだが、地方公務員法は「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。」(第24条第5項)とある。つまり労働基準法の使用者としての義務を果たすためには、 自治体は労災保険が適用される非常勤職員の3日目までの補償を支払うために条例を制定しておかなければならないのだ。
ところが驚くべきことに、 この条例を制定していない自治体がきわめて多いのだ。たとえば大阪府の市町村の例規集を調べてみると、 この条例を制定していない自治体のほうが多数派だ。 条例が存在しない自治体の非常勤職員は、 3日目までの補償をどのように受けているのだろうか。 それとも労基法違反が放置されているのだろうか。

公務災害補償独自の補償適用には条例制定が必須

労災保険による補償と公務災害補償の給付内容は、 格差が出ることのないように均衡をはかる措置がとられている。 福祉事業のいろいろな給付金についても、 同じ制度となっている。たとえば就学援護金も大学、高校、 中学と段階に応じて金額が定められているが、 金額の改正についても一緒に引き上げるなどの措置がとられている。
それでも、いくつかの部分で違いがあり、それが格差とみられるようなものもある。その一つが、 1月号でも触れた遺族特別援護金と障害特別援護金だ。
地方公務員災害補償法による福祉事業の一つである遺族特別援護金は、 公務災害で1860万円、 通勤災害で1055万円、 障害特別援護金は公務災害で第1級1540万円から第14級45万円が支給されることになっている。 これは国家公務員災害補償法もまったく同じになっている。 公務災害独自の制度として創設した趣旨は、 民間企業で上積補償制度があることとの均衡をはかるというものだ。
だとすると、 労災保険の適用となっている非常勤職員についても、 当然にこの制度が適用されるべきだろう。 公平さを保つためには、 やはり条例を定めることにより、労災保険の給付以外の措置として、 遺族特別援護金と障害特別援護金を支給することを明確にしておかねばならないだろう。

様々な制定状況

このような条例制定状況については、 各自治体の例規集を点検すると分かるが、 規定の仕方は様々だ。 残念ながら多数派の、まったく制定されていない自治体、 3日までの休業補償の支給だけを定めているもの、 遺族特別援護金と障害特別援護金の支給を定めているもの、 それに特別援護金以外でも不足する部分については補償や福祉事業を行うと規定するものもある。
少なくとも労基法違反とならない条例は必須だし、公平な補償も不可欠ということから、 すべての地方公共団体で点検が必要なことではないだろうか。
ここでは参考のために、 大阪府高槻市の規則を掲載しておくことにする。

高槻市
○労働者災害補償保険法の適用を受ける職員の休業補償等に関する規則
平成10年3月25日規則第6号
(趣旨)
第1条 この規則は、労働者災害補償保険法 (昭和22年法律第50号。以下「法」という。)の適用を受ける非常勤職員(以下「職員」という。)の公務災害又は通勤災害(以下「公務災害等」という。)に伴う休業補償その他の補償及び福祉事業(以下「休業補償等」という。)に関し必要な事項を定めるものとする。
(定義)
第2条 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、 当該各号に定めるところによる。
(1) 公務災害 法第7条第1項第1号に規定する業務災害をいう。
(2) 通勤災害 法第7条第1項第2号に規定する通勤災害をいう。
(3) 給付基礎日額 法第8条に規定する給付基礎日額をいう。
(休業補償等の実施)
第3条 この規則で定める休業補償等の実施については、 休業補償等を受けようとする者の請求に基づいて当該職員の任命権者が行うものとする。
(休業補償)
第4条 職員が公務災害等による療養のため勤務することができない場合において、報酬その他の収入を得ることができないときは、休業補償として、報酬その他の収入を得ることができない第3日目までの期間につき、1日につき給付基礎日額の100分の60に相当する金額を支給する。(休業援護金)
第5条 前条の規定による休業補償を受ける職員に対し、 休業補償が支給される期間につき、休業援護金として、1日につき給付基礎日額の100分の20に相当する金額を支給する。
(障害特別援護金及び遺族特別援護金)
第6条 法第12条の8第1項第3号に規定する障害補償給付又は法第21条第3号に規定する障害給付を受けた職員に対し障害特別援護金を、法第12条の8第1項第4号に規定する遺族補償給付又は法第21
条第4号に規定する遺族給付を受けた者に対し遺族特別援護金をそれぞれ支給する。
2 障害特別援護金及び遺族特別援護金の支給については、 高槻市議会の議員その他非常勤の職員の公務災害補償等に関する条例(昭和42年高槻市条例第52号。以下「条例」という。)の適用を受ける職員の例による。
(その他の補償又は福祉事業)
第7条 前3条に定めるもののほか、法の規定による保険給付又は労働福祉事業が行われる場合において、 条例を適用した場合に行うことができる補償又は福祉事業に満たないときは、 その満たない分に
相当する補償又は福祉事業を行うものとする。
(補償の請求方法等)
第8条 高槻市議会の議員その他非常勤の職員の公務災害補償等に関する条例施行規則(昭和42年高槻市規則第36号)第8条本文、第10条及び第19条の規定は、 この規則に基づく補償の請求方法及び支給
方法並びに福祉事業の申請等について準用する。
(委任)
第9条 この規則の施行に関し必要な事項は、任命権者が定める。
附則
1 この規則は、公布の日から施行する。
2 この規則は、平成9年4月1日以降に生じた公務災害等について適用する。

独自の見舞金条例は
非常勤にも適用されるか?

地方公共団体がその雇用する職員について、 どのような条件設定をするかは、民間と同じように様々だ。公務災害補償制度は、最低限の労働条件だから、 日本中どこでも一緒でなければならない。 ただ上積みの補償制度となると、その自治体により様々であってかまわない。
実際、各地方自治体の災害補償に関わる条例を調べてみると、実際、様々であることが分かる。 万が一の時の災害補償制度という性質上、 どのような考え方にもとづき制度を設計するかというのは、 その自治体の担当職員の考え方が影響するというのは容易に想像がつく。 もちろん条例である以上、 担当部局で慎重に吟味され、 議会での審議が行われて制定されることになるのだが、 格別の詳細な議論が行われることがない限り、 条例案を起案した職員や部局の認識が反映されることになるのだろう。
また、 制度設計は先行して制定している近隣の自治体の例を参考にすることが多く、地域により公務災害上積補償制度の充実度は大きく差が開いているのが現状だ。その補償制度の内容 (たとえば金額や支給方法など)については、次の機会に紹介することにする。ここでは、非常勤職員の取り扱いについて大阪府下の自治体に限って紹介してみたい。


特別援護金という地公災法の独自上積補償の問題については先に触れたが、 ここで問題にするのは自治体独自の上積補償制度だ。通常「○○市見舞金条例」と題した条例により、 民間企業の上積補償制度と同様に、被災職員や遺族には、死亡、障害について見舞金として一時金が支給される。都市部の地方自治体では、 条例が制定されていることが多いが、全国的にみると、制定されているのは少数派だ。
大阪府下をみると、 北摂地域の自治体はすべての市町で見舞金条例が制定されているが、 その他の地域では制定されていないところも多い (インターネットで公開されている各自治体の例規集を調べた範囲によるもので、未掲載や、筆者の見落としによる場合もある。)

見舞金で非常勤を除外??

大阪府下43市町村のうち、 見舞金条例が制定されているのは31市町村となっている。(大阪市は、休業補償、傷病補償年金の各受給者について、 100%支給とする独自の補償条例があるが、 見舞金条例を設けていない。)
そのうち、 労災保険が適用される職員を除外しているところは8市町となっている。さらに災害補償条例が適用される本庁の非常勤職員も対象から外しているところも2市ある。また、 この表をみてあらためて驚いたのは、 労働者ではない非常勤の消防団員はちゃんと対象に含めているのに、非常勤職員を除外しているところがあることだ。
8市町の労災保険適用となる非常勤職員は、 万が一、 公務災害被災者となったときは、特別援護金の支給はなく、さらに見舞金の支給もない、 つまり二重に差別されることになってしまう。すみやかに条例の改正は必須といえる。
ただ筆者が今回大阪府下の条例を点検してみて確認できたのは、 かつて点検した20年前にくらべると、大きく改善していることだ。公務災害補償制度の充実は、各自治体やその職員組合などの努力で個々に改善されてきたものと考えられるが、 もっと統一的な取り組みが行われてしかるべきではないだろうか。
『関西労災職業病』2019年3月(297号)

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