給付基礎日額を自庁取り消し/確定診断日は審査請求/和歌山労基署

和歌山県で保温工として就労していた被災者は、 平成27年3月8日に肺がんで死亡した。 もともと脳疾患を患っており、 その後遺症で高次脳機能障害や左半身麻痺など抱えて生活していたが、 転倒による骨折をきっかけに平成27年1月末に入院した。入院先の病院で肺がんが確認されたものの、その3日後に亡くなったことから、死後に遺族である妻が労災請求を行った。
広範囲の胸膜プラークを伴う肺がんであり、また就労先も明らかであったため、石綿に起因する肺がんとして認められたのであるが、決定内容に誤りがあったことから、和歌山労働基準監督署に申し入れをする一方、審査請求も行った。
和歌山労働基準監督署の誤りの第1点目は給付基礎日額の算定である。 事業所も被災者の就労時の全期間について資料を残していたわけではなく、最終年の1年分が残っていただけにすぎなかった。ただし、定年退職を平成16年6月30日にしたのち、平成17年7月1日から嘱託契約を結んでいる雇用契約書の写し、 さらに定年再雇用で1年契約をしたと明記されている離職証明書と労働者名簿を事業所から提出されている。 しかし定年再雇用後は事務職として石綿にばく露することもない作業に従事しているため、 定年前の賃金で給付基礎日額が算定されるべきところ、 再雇用後の賃金で算定してしまったのである。
昨年12月に開示請求資料を持って和歌山労働基準監督署でこの誤りを指摘したものの、 訂正されることがなかったためにやむなく審査請求を行った。 和歌山労働局の労災保険審査官によると、 審査請求事案に対して提出される原処分庁である和歌山労働基準監督署長の意見書がなかなか提出されないということであったが、 8ヶ月後の本年8月、 請求人に対して給付基礎日額の変更決定通知が届いた。
この自庁取消に伴い、 審査官から審査請求の取り下げを求められているが、 本件にはもう1点誤りがあると考えているため、安易に取り下げはできない。
和歌山労働基準監督署の判断のもうひとつの誤りは、 確定診断日である。 既述のとおり、 肺がんの確定から死亡まで3日しか経っていない。 時系列で出来事を並べてみると、
平成27年1月23日 腰椎圧迫骨折の
ため入院
平成27年3月3日 胸部Xp
平成27年3月5日 肺がん確定診断
平成27年3月8日 永眠
となっており、 監督署の判断は3月3日の胸部レントゲン撮影が根拠となっている。しかし、腰椎圧迫骨折の患者に、胸部レントゲンが必要になるだろうか。 何か胸部疾患の疑いがあるためにレントゲンを撮ったのであると考えることが妥当であろう。
入院中のカルテを調べてみると、 2月中旬には回復期に入り、コルセットも処方されている。その一方2月18日に初めて吐血した以降も散発し、投薬、採血などの治療が行われている。 当初主治医は消化器系の疾患を疑い、直腸診なども行っていたが、3月に入ってはじめて肺がんの陰影を画像で確認したのである。
病理検査は行っていないものの、 画像所見から労災医員も原発性肺がんを認め、 遺族補償給付の支給は決定されたが、 胸部レントゲンの撮影日をもって療養の開始日とすることは早計ではないだろうか。
『関西労災職業病』2018年9月(492号)

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