長尾原発労災「内部被爆」に関する意見書提出

(2003年9月機関誌より)

東芝などに団体交渉要求

総被曝量は記録値の倍以上か

本誌6、7月号でも報告した長尾原発労災に関して、労災請求中の長尾光明氏がもっとも長く作業し放射線被曝した東京電力福島第1原発において、放射線管理手帳に記載されている外部被曝線量70mSvのほかに、相当量の内部被曝を被っていた可能性が極めて高く、その内部被曝線量は100mSvを上回ると推定されるとする意見書が厚生労働省に提出された。つまり、全体では、記録された70mSvの2倍以上の被曝を受けていた可能性が高いというのだ。その原因は、プルトニウムなどのα核種汚染である。
意見書を作成した小山英之氏は元大阪府立大学工学部助手で、現在、「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」(以下、美浜の会)の代表として活動している。α核種汚染を内部告発する資料が美浜の会に送られてきたことから、他の団体とともに東京電力や原子力安全・保安院に対する取り組みをつづけていた。ある日、内部告発を報じた新聞記事を見た長尾氏が美浜の会に連絡してきたことから長尾氏の問題を知ることになった。
長尾氏が作業した当時、α核種(主としてプルトニウム)汚染が存在していたことが内部告発で明るみに出た。原因は、福島第1原発の燃料破損が原因と考えられている。告発内容自体は長尾さんが作業した2,3号機ではなく、1号機の件であったが、その資料には、2号機でも同様な事態が起こっていたことを示す一次冷却水のα核種汚染が存在していたことが記載されていた。
実際に2号機の方も1号機と同じ欠陥をもつ燃料集合体が使用されていたこと、破損が原因とみられる放射能漏れが1977年3月の定検時に発見されたことが公表されていることが、有力な状況証拠としてあがっている。ところが、東京電力はこの2号機の燃料破損に関する資料開示を拒否しているのである。
当時の現場には「α核種汚染の事実」はいっさい伏せられいた。長尾氏にとっても聞いたことのない話だった。プルトニウムを含む微粒子が空気中を浮遊している現場で、防護マスクもつけずに作業させられていたわけで、こうした状況が明らかになったのは日本の原子力発電史上でも前代未聞のことだ。
プルトニウムを吸い込めば骨に蓄積し、内部被曝を生じる。当時の現場には長尾さんもいた。そして、十数年後、多発性骨髄腫という白血病類似の骨髄のガンを発症した。
原因にプルトニウムによる内部被曝が関与してはいないのか、関与したとするとどのくらいの被曝線量をもたらしたと考えられるのか。この点を、数値的に評価したのが今回の意見書だ。意見書は、長尾さんを襲った多発性骨髄腫を単なる偶然だとすることは決してできないことを示している。
「それ、ちょっと待てよ?」
そう、長尾氏だけのことではないのである。
長尾氏の件は、現在、厚生労働省本省での検討が進められている。長尾氏の被曝線量は白血病の労災認定基準の3倍に達していること、多発性骨髄腫が白血病類似の疾患であることを踏まえて速やかに労災認定されるべきなのは言うまでもない。今回の意見書は、その根拠を強化するとともに、長尾氏の件が当時の福島第1原発で就労した労働者一般に関わる問題であることを明らかにしており、福島第1原発のα核種汚染問題の全容解明と情報開示を強く迫るものといえる。

〔長尾原発労災インターネット情報〕
http://www.jca.apc.org/mihama/News/news74/news74nagao.htm
http://www.jttk.zaq.ne.jp/hibaku-hantai/nagao-siryo.htm

全造船神奈川地域分会、要求書提出

長尾氏は全造船神奈川地域分会(よこはまシティユニオン)に加入した。ユニオンは9月18日付けで直接の雇用者である石川島プラント建設、その親会社の石川島播磨重工業、元請会社の東芝に対して、以下の内容で長尾氏の労組加入を通知するとともに団体交渉を要求した。

2003年9月18日

株式会社東芝横浜事業所原子力フィールド技術部
取締役社長 岡村 正 殿

石川島播磨重工株式会社
代表取締役社長 伊藤 源嗣 殿

石川島プラント建設株式会社
代表取締役 上原 彰彦 殿

全造船神奈川地域分会(よこはまシティユニオン)
執行委員長 村野 元清

長尾光明の労働組合加入通知及び団体交渉要求書

石川島プラント建設株式会社の元従業員であり、東京電力福島第一原子力発電所などで働いた長尾光明(以下「組合員長尾」という。)が、2003年8月11日付けで、全造船神奈川地域分会(よこはまシティユニオン、以下「当労組」という)に加入したことを通知する。
すでに貴社らもご存知の通り、組合員長尾は、福島第一原子力発電所などでの放射線被曝によって、「多発性骨髄腫」(以下「本件原発労災」という)を発症し、現在富岡労働基準監督署に休業補償請求している。本件原発労災の業務との因果関係については、厚生労働省が調査中であるが、当時の職場における放射線等のデータ、実態については、貴社らおよび東京電力が当然把握・記録すべきものであり、それらを請求人が属する当労組に資料提供するなどして、早期業務上認定に協力すべきであると考える。
ついては以下の通り要求する。

1、 貴社らが、組合員長尾が就労した当時の福島第一原発における放射線被曝の実態がわかるデータ、資料等を当労組に資料提供すること。
2、 貴社らが把握していない当時の実態については、東京電力に対して資料提供を求めること。
3、 組合員長尾と同様に当時福島第一原発で就労した労働者の情報を当労組に情報提供すると共に、当該労働者に対しては、当時の職場実態や関連する情報を積極的に提供するように要請すること。
4、本件原発労災に関する団体交渉を2003年10月16日までに開催すること。
5、上記4項目に対する貴社らの見解を団体交渉当日までに文書で回答すること。

 

なお第1回団交を大阪で開催するよう強く求めている。
ユニオンでは今後、団交などを通し、長尾氏の労災に対する事実解明を進め、責任を明らかにさせていきたいとしており、すでに長尾氏支援に結集している団体もこれに協力していくことになっている。

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